表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/154

第88話「香味野菜と、パセリの天ぷら」



深夜2時を過ぎたというのに、まだほんのり熱を帯びた都会の片隅。

「深夜食堂しのぶ」の暖簾が、夜風に揺れている。


ガラガラッ。


戸を開けて入ってきたのは、背筋の伸びた、眼鏡をかけた女性客。

おそらく30代半ば。ビジネススーツの袖を少しだけまくって、ネイルは控えめ。


「こんばんは、おかみさん。……やってる?」


カウンター越しに微笑んだのは、おかみさん――しのぶさん。

厨房の奥には、無口だが優しい眼差しの板前・マサさんがいる。


「いらっしゃい。今日もお疲れさま。飲む前に、ちょっと何かつまむ?」


「うん……。今日はね、子どものころ母が作ってくれた“パセリの天ぷら”が、無性に食べたくなって」


忍さんが少し目を丸くする。


「……パセリの天ぷら?珍しいわね」


「うち、母が香味野菜好きで。三つ葉とか、セリとかも天ぷらにしてた」


それを聞いて、マサさんがすっと立ち上がり、冷蔵庫へ。

香味野菜の中から、春菊、みょうが、大葉、パセリなどを取り出していく。


ジュッ……と油の音。


静かな店内に、揚げ物の香ばしい匂いが漂う。


 


やがて、白木の皿に並べられた、天ぷらたち。


・パセリ(茎ごと揚げて、パリッと)

・みょうが(縦半分に切って衣をつけて)

・大葉(裏返して衣で包むように)

・春菊(葉先を軽くまとめてふんわり)


「熱いうちに、どうぞ」


忍さんが天つゆと塩を添えて差し出す。


彼女は目を細め、パセリの天ぷらに箸を伸ばす。


「……うわ、懐かしい……。この香り、この軽さ……母の味に、似てる」


ぽろりと涙がこぼれた。


「ちょっとだけね、疲れてたのかも」


忍さんは黙って、温かい煎茶を湯呑みに注ぐ。


「大人になると、無性に食べたくなる“あの味”ってあるのよね」


マサさんは、黙って追加で一品。


小さな小鉢に、甘酢に漬けた新生姜を添えて差し出した。


「口直し……ありがと、マサさん」


彼女は、ふっと笑って、静かに食べ続けた。


 


――夜は静かに、優しく更けていく。



---


本日のレシピ『香味野菜とパセリの天ぷら』


【材料】(2人前)


パセリ(大きめ1束)


大葉(4枚)


春菊(数本)


みょうが(2本)


天ぷら粉(適量)+冷水


揚げ油(適量)



【ポイント】


パセリは水気をよく切ってから衣を絡めることでカラッと揚がる。


春菊や大葉は、衣は薄めにして“香り”を楽しむ。


天つゆは、出汁:醤油:みりん=4:1:1。すりおろし生姜を加えても美味。


お塩でシンプルに味わうのもおすすめ。



ひとことアドバイス


> 香味野菜は苦手な人もいるけれど、大人になると不思議とクセになる味。

疲れた夜に、サクッと揚げて、熱々を一口。心がふっと和らぎます。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ