表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/154

第82話:鶏の香味土鍋ごはん



 


深夜0時をまわった頃、「深夜食堂しのぶ」に、ひとりの女性客がふらりとやってきた。


 


肩まで伸びた黒髪、スーツ姿にハイヒール。軽く疲れたような表情を浮かべて、暖簾をくぐる。


 


「いらっしゃい。おひとり?」


「……はい。すみません、今日、メニューにないの、お願いしてもいいですか」


 


奥から静かに現れたのは、無口な板前・マサさん。


その後ろから、穏やかな笑顔のおかみさん・しのぶさんが声をかける。


 


「メニューにないものほど、腕の見せどころですわ」


 


女性がゆっくり口にしたのは――


 


「鶏の、土鍋ごはん……みたいなもの、できますか?」


 


一瞬、マサさんの眉がわずかに上がった。それを合図に、厨房が静かに動き始める。


 


 


***


 


鉄のフライパンに、塩コショウを振った鶏胸肉が置かれる。ジュウッという心地いい音。


皮がパリパリになるまで、じっくりと両面を焼く。


 


残った鶏油に、千切りの生姜と刻みネギを加えて、じわじわと香りを立たせる。


 


その香味油ごと、土鍋に移す。


焼いた鶏肉は、食べやすくカットされてから、白米の上に丁寧に並べられる。


 


あとは、火にかけて炊くだけ。


 


土鍋の蓋がふるえ、香りが店内にふわりと広がる。


 


 


***


 


「……お待たせしました」


 


ふたを開けた瞬間、ふわっ、と鶏と生姜の香りが湯気に乗って広がる。


 


「いただきます……」


 


女性は、ひとくち口に運び、言葉を失ったように目を見開いた。


 


カリッとした鶏皮、しっとりとした胸肉。


ネギと生姜の香味がごはんにしみて、まるで小さな贅沢のようだった。


 


「……すごく……優しい味。なんだか、泣きそう」


 


静かに、ごはんをかき込む。


誰も彼女には何も言わない。ただ、時折マサさんが湯呑みにお茶を注ぐだけ。


 


夜の深い静けさの中で、ひとりの人間が、少しだけ救われていく。


 


 



---


レシピ:鶏の香味土鍋ごはん(1人前)


材料:


鶏胸肉:1枚


塩・コショウ:少々


生姜:1かけ(千切り)


ネギ:10cm(小口切り)


米:1合(30分前に浸水)


水:200ml



手順:


1. 鶏胸肉に塩コショウを振り、皮目からカリカリに両面を焼く。



2. 焼き終えた後の油で、生姜とネギを軽く炒める。



3. 土鍋に米、水、炒めた香味油を加え、カットした鶏肉を上に並べる。



4. 蓋をして中火にかけ、沸騰したら弱火で10分、火を止めて10分蒸らす。



5. 好みで醤油少々や刻み大葉、柚子胡椒を添えても美味。





---


ひとことアドバイス:

鶏肉はモモでも代用可。炊き上がりにバター少し入れてもコクが出でます。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ