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第72話 変わり種、冷やし中華



 


蒸し暑い夏の夜。

日付が変わる頃、ひとりの若い女性が暖簾をくぐった。


 


「いらっしゃい」


おかみさん、しのぶがいつもの優しい声で出迎える。

奥の厨房では、無口な板前・マサさんがちらりと目を向けて、すぐに包丁を走らせる音を再開した。


 


「……メニュー見てもいいですか?」


女性は汗をぬぐいながらカウンターに腰をおろしたが、目の前の短冊メニューには定番ばかり。


「でも、あの……冷やし中華、できますか?」


 


忍はふふっと微笑んだ。


「できるわよ、うちは“あるもので作る”のが売りだから」


 


 



 


厨房ではマサさんが静かに冷蔵庫を開け、具材を並べていく。


ハム、きゅうり、錦糸卵……までは普通だが、彼が手にしたのは、なんと、焼き茄子と梅干し、そしてカニカマだった。


 


「……えっ、何これ?」


驚いた顔の女性に、忍が言う。


「マサさんの“変わり種冷やし中華”。クセになるのよ、これが」


 


タレは胡麻ベースに、少しだけ柚子胡椒を利かせる。

酸味の代わりに、叩いた梅干しがタレにまろやかさを加えていた。


 


焼き茄子の香ばしさ。梅干しのほのかな酸味。

カニカマの甘みが錦糸卵と絡まり、口の中でひとつになる。


 


「……うん、冷たいのに、あったかい味がする……」


思わずこぼれた女性のひとことに、マサさんが少しだけ口の端を上げた。

それを見た忍は、小声でつぶやいた。


「めずらしく笑ったわね」


 


女性は、冷やし中華を食べ終えたあと、ぽつりと呟く。


「彼、冷やし中華にマヨネーズかける人だったんです。だから、食べるのがちょっと……」


それでも――


「これなら食べられます。きっと、あの人も、好きだったかも」


 


帰り際。彼女は空になった器を見て、小さく微笑んだ。


 


 



---


本日のレシピ:変わり種冷やし中華


【材料】


中華麺(冷やし中華用)1玉


焼き茄子 1本分(皮をむいて縦に裂く)


梅干し(はちみつ漬けでも可)1個


カニカマ 2本


錦糸卵、きゅうり、ハムなど適量



【タレ(ごまベース)】


練りごま 大さじ1


醤油 大さじ2


酢 大さじ1


砂糖 小さじ1


ごま油 少々


梅干し(叩いて混ぜる)


柚子胡椒 少々



【アドバイス】

・タレは前もって冷やしておくと、より風味が活きます。

・焼き茄子は皮をしっかり焼いてから、冷やすと香ばしさアップ。

・辛味が欲しい方はラー油を数滴足してもOK!


 






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