第69話:特製・焼売(しゅうまい)
──デカくて、熱くて、ジューシィ。
「……この時間に、開いてて助かりました」
午後11時半、ぽつぽつと雨の音。
暖簾をくぐって入ってきたのは、長身の女性だった。
黒のスーツに乱れのない髪、化粧も完璧。いかにも“できる女”。
「いらっしゃい」
おかみの**忍**が微笑む。
「お疲れ様です」
板前のマサは、手元を見たまま小さく頷いた。
女性はカウンターに静かに腰かけた。
緊張が滲んでいた。
しばらく無言で、店内の壁を見渡している。
「……メニューにないんですけど」
彼女がぽつりと口を開く。
「焼売……大きめの。昔、父が作ってくれたやつに、似てるといいんですけど」
忍は目を丸くし、少し笑う。
「また懐かしいもの、来たわねぇ」
マサが静かに頷くと、引き出しから豚ひき肉、玉ねぎ、干し椎茸を取り出し始めた。
──数分後、蒸籠から湯気があがる。
「お待たせ」
カウンターに置かれたのは、手のひらサイズの、特製ジャンボ焼売が三つ。
艶やかな皮に包まれた、どこか懐かしい香り。
「……いただきます」
ひとつ箸で割ると、湯気と肉汁がジュワッと溢れる。
「あっつ……っ」
口元を押さえながらも、女性は思わず笑っていた。
「すごい、懐かしい……。味、そっくりです」
そして、ふと表情がやわらぐ。
目元の緊張が、ほんの少しほどけていた。
「父の味、なんて忘れてたのに……」
ポツリと漏れたその言葉が、夜に溶けていった。
忍がふっと目を細める。
「味覚って、思い出を連れてくるのよね」
マサは、黙ったまま次の焼売を蒸し始めていた。
店の外はまだ雨。
だが、彼女の目元には、もう曇りはなかった。
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本日のレシピ:ジャンボ焼売(約3個分)
豚ひき肉:200g
玉ねぎ(みじん切り):1/4個
干し椎茸(戻して刻む):2枚分
おろし生姜:少々
醤油:小さじ1
ごま油:小さじ1
片栗粉:小さじ2
焼売の皮:大判(または餃子の皮で代用)
作り方:
1. 材料をすべて混ぜてしっかり練る。
2. 大きめに丸めて皮で包む(上を少し開けて焼売らしく)。
3. 蒸籠または蒸し器で約15分。
4. 酢醤油+練り辛子でどうぞ。
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アドバイス:
肉の代わりに鶏ミンチでも◎。
水分が多いと皮が破れやすいので注意。
あえて「でかく」作ると、記憶に残る味になります。
次回も、どこかで誰かが、ちょっと優しくなる一皿を。




