表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/154

第67話:豆腐の揚げドーナツ



---


夜更けの雨音が、静かな裏路地に沁みわたる。

「深夜食堂しのぶ」の提灯が、ぽうっと淡く揺れていた。


その扉を開けたのは、スーツの肩をしっとり濡らした中年の男性だった。

「……やっぱり、ここに来ちまったな」


カウンターの奥では、無口な板前“マサさん”が湯気立つ鍋に火をくべている。

奥からは、優しい笑みを浮かべた“おかみさん”こと忍さんが顔を出した。


「いらっしゃい。何にしましょう?」

「……昔、うちのじいちゃんがよく作ってくれたやつ……豆腐のドーナツって、できますか?」


マサさんは一度目を伏せ、次に忍さんと目配せを交わす。

「木綿豆腐があったはずだよね」

「……ある」


それだけで、物語が始まった。



---


カウンターの向こうでは、豆腐をしっかりと水切りしてボウルに入れる。

木綿豆腐に卵を落とし、砂糖、小麦粉。シンプルな素材。

スプーンで生地を落としながら、じゅわっと油の音が上がる。


「そうそう……この音だ。よく、夕方の台所で聞いてたなぁ……」


鍋の中でこんがりと丸まったドーナツは、サーターアンダギーにも似ているが、もう少し不格好で素朴な形。


「できたよ。熱いうちにどうぞ」


目の前に差し出されたそれを、ひとつ手に取り、かじる。


……さっくり。中はふわりとやわらかく、豆腐の優しさが口いっぱいに広がる。


「……うまいな。あの頃の味、思い出すよ。ありがとう」


 


忍さんは静かにほほ笑み、マサさんは火を落とした鍋に目をやる。


「じいちゃん、ああ見えて頑固だったけど、あれだけは、いつも笑って作ってた」


「きっと、あなたのことが大好きだったんでしょうね」


「……ああ」


 


時計の針が午前二時をまわる。

男はドーナツの最後のひとつを、ゆっくりと口に運ぶ。


「また、来ます」

「お待ちしてますよ」



---


今回のレシピ『豆腐の揚げドーナツ』


材料(8個分程度)


木綿豆腐:1丁(300g前後)


卵:1個


砂糖:大さじ2


薄力粉:120g〜150g


ベーキングパウダー:小さじ1(あれば)


揚げ油:適量



作り方


1. 木綿豆腐はしっかりと水切りして、ボウルでつぶす。



2. 卵・砂糖を加え混ぜ、さらに薄力粉(+ベーキングパウダー)を加えて混ぜる。



3. スプーンで生地をすくい、170℃くらいの油にそっと落とす。



4. 丸く膨らみ、表面がきつね色になるまで揚げて完成!




アドバイス

・粉の量は豆腐の水分量で調整してください。少し柔らかめでもOKです。

・シナモンやきな粉をまぶしても◎

・冷めてもほんのり甘く、朝食にもおすすめ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ