第6話:赤いタコさんウインナー
夜も更けた頃、「深夜食堂しのぶ」に、一人の中年男性がふらりと入ってきた。
「……いらっしゃい」
柔らかな声で迎えるのは、この店のおかみさん、忍。
厨房では、無口な板前のマサさんが黙々と片付けをしているところだった。
「メニューは……まあ、あってないようなもんだって聞いてきたんだけどさ」
男はカウンター席に座り、少し照れたように笑う。
「赤いウインナー、作ってくれる?」
忍は少し驚いたように目を丸くしたが、すぐに優しく笑った。
「タコさんウインナーでいいのかい?」
「そう。……子どもの頃、親父がたまに作ってくれたんだ。ふと思い出しちゃってね」
***
やがて、マサさんが静かに厨房へ入り、手際よくウインナーを切り、タコの形に仕上げていく。
鉄のフライパンに油が弾ける音が心地いい。
ジュウ、と焼ける匂いが広がった。
皿に盛られたそれは、懐かしさそのものだった。
赤く染まったウインナーが、愛嬌のある形で微笑んでいるように見える。
男は一口、頬張った。
――パリッ。
噛むたびに、ほんのり甘い脂と塩気が広がる。
「……ああ、これだ」
男は箸を止めず、無言で食べ続けた。
「仕事、嫌になって逃げ出してきたんだ」
ポツリとこぼれた言葉に、忍はそっと湯呑を差し出す。
「でも……こういうの食べてるとさ、不思議と少しだけ、生きててもいいかなって思うんだよ」
マサさんは何も言わず、静かに厨房を片付けていた。
男は食べ終わると、深く頭を下げて言った。
「ごちそうさま。また来ます」
忍は静かに頷き、こう返した。
「次は、親父さんのレシピ、聞かせてね」
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本日のレシピ:赤いタコさんウインナー
材料:
・赤いウインナー(なければ普通のウインナーでも)
・サラダ油 少々
作り方:
1. ウインナーに縦の切れ込みを入れ、タコの足の形に整える(下半分に8本ほど切れ目)
2. フライパンに油をひき、弱火でじっくり焼く
3. 足が開いてカールし、表面に焼き色がついたら完成!
ワンポイントアドバイス:
・ケチャップやマスタードを添えても◎
・お弁当やおつまみにもぴったり!
・目玉焼きと一緒に盛ると見た目も満足感もUP!