表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/152

第57話「ハムカツ定食」



「……あっつ、サクッ……うまっ……!」


カウンターの席で、ひとりの中年男性が小さく声を漏らす。 目の前には、こんがり揚がったハムカツがふたつ。 一つは分厚く、もう一つは、昔ながらの薄切りタイプ。


静かにテレビの音が流れる深夜二時の「深夜食堂しのぶ」。 店内の空気は落ち着いていて、木の温もりが心をほっとさせてくれる。


「昔はさ、薄いハムカツに、ソースべちゃっとかけて、白飯がっつくのが定番だったんだよ」 男が言う。


「あたしもよ。母ちゃんがよく弁当に入れてくれてたわ」 おかみさんの忍が微笑む。


「でも最近は、厚切りばっかりよね。食べ応えはあるけど、なんか違うのよ。アレは別物」


カウンターの奥、寡黙な板前のマサさんが、片手で包丁を握り、もう一方でソース鍋を温めている。 彼は何も言わずに、二枚目のハムカツをそっと油に沈めた。


パチパチッと油の音。


その音に、店内の空気が少し弾む。


「俺、今日会社でさ、部下に“薄いハムカツって意味あります?”って言われてさ」


「意味があるのよ。思い出って味がするの」


「……そっか。味の奥に、あの頃があるんだよな」


サクッ―― 一口かじると、薄切りのハムの香ばしい香りと、ちょっと甘めのソースが舌の奥に広がる。


マサさんが、無言でお代わりのご飯を差し出す。 それに小さく頭を下げると、男は少し照れ臭そうに言った。


「……今日、来てよかった」


忍が笑う。 「また、いつでもいらっしゃい」


夜はまだ深いけれど、店内には確かに、誰かの心を温める味があった。



---


今日のレシピ:ハムカツ定食(懐かしの薄切り&今どき厚切り)


材料(2人分):


薄切りハム(ロース)……4枚


厚切りハム(ボンレスハムなど)……2枚


小麦粉、卵、パン粉……各適量


サラダ油……揚げ用


中濃ソース……お好みで



作り方:


1. ハムに小麦粉→溶き卵→パン粉の順に衣をつける。



2. 180℃の油で、薄切りは1分ほど、厚切りは2〜3分きつね色になるまで揚げる。



3. ソースをかけ、千切りキャベツを添えて完成。




アドバイス:


薄切りハムは2枚重ねてもOK。軽めのサクサク食感を楽しみたいなら1枚で。


ソースは温めた方が香りが立ちます。


おにぎりとセットにすると、より“あの頃”の弁当気分。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ