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第40話:マサ、パンを焼く



深夜0時をまわったばかり。

古びた路地裏、提灯の明かりがぽつりと灯る。


「深夜食堂しのぶ」――その扉が、きぃ……と開いた。


 


「こんばんは。まだ、やってますか?」


 


現れたのは、三十代半ばのOL風の女性。

ベージュのジャケットに、どこか疲れの色をにじませた目。

マサはカウンター越しに頷く。


「いらっしゃい」


 


奥からおかみさん、忍がやって来た。

にこやかな笑みで、静かに言う。


「メニューにないものでも、食べたいものがあれば言ってくださいね」


 


女は、少し逡巡してから呟いた。


「……パン。焼きたての、あったかいやつ……食べたいです」


 


「パン、か」


マサが少し意外そうに眉を動かす。

だが、すぐに立ち上がり、厨房の奥へ。

店の隅には、薪の小さな石窯がひっそりと構えている。


 


――しばらくして、香ばしい香りが漂い始めた。


 


フランスパンの生地にオリーブオイルを塗り、少し塩をふって、窯の中へ。

パチパチと薪がはぜる音の中、マサの手際は静かで、力強い。


 


「うわ……いい匂い」


 


忍が小皿に、手作りのハーブバターと、軽く炒めたベーコン入りスクランブルエッグを添える。

湯気の立つパンが、木の皿にのって出される頃――

女の目が、少し潤んでいた。


 


「小さい頃、朝のキッチンで、母がパンを焼いてくれたのを思い出して……」


 


一口かじる。

パリッと音がして、内側からはもっちりした湯気。

バターが溶けて、卵とベーコンの旨みがじゅわりと絡む。


 


「……美味しい。すごく、美味しいです」


 


マサは少しだけ、口の端を上げた。


忍はそっと、お冷やを差し出す。


「よかったらまた来てください。朝が遠くても、ここはいつも夜ですから」


 


女は深く息を吐き、立ち上がる。


「なんか、もう少し、頑張れそうな気がします」


 


扉が閉まったあとも、パンの香りが、店内にやさしく残っていた。


 



---


今夜のレシピ:マサの石窯焼きパン


材料(2〜3人分)


強力粉:250g


ドライイースト:5g


塩:4g


ぬるま湯:150ml


オリーブオイル:大さじ1



作り方


1. 材料をボウルで混ぜ、10分ほどこねる。



2. ラップをかけて常温で1時間発酵。



3. ガス抜きをして丸く整え、オーブンまたは石窯で200度で20分焼く。



4. 仕上げにオリーブオイルと塩を表面にひと塗り。




アドバイス


オーブントースターでも代用可能(焦げすぎ注意)。


チーズやベーコン、ローズマリーを生地に混ぜても香り高く仕上がります。





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