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第31話 「焼きそばのつけ麺」



 


「マサさん、焼きそばのつけ麺って、できる?」


 カウンター席の隅に腰掛けた若い女性が、ぽつりと呟くように言った。


 平日の深夜二時過ぎ。

 この時間でも灯りが消えない、裏通りの食堂――「しのぶ」。


 店主のマサは、ちょっとだけ目を見開いた。


「つけ麺で……焼きそば?」


「うん、あの、変なお願いかもしれないけど、昔お父さんが、よくやってくれたの」


 女の名前は、涼香すずか

 スーツ姿で、どこか疲れた顔をしているが、マサと忍にとっては、もう馴染みの常連客だった。


 


「……それなら、やってみようか」


 マサは厨房に戻り、黙々と材料を準備し始めた。

 忍は、そっと涼香の前に冷たい麦茶を置く。


「今日も、おつかれさま」


「ありがとう……ほんとに、ここがあってよかった」


 


 


 



 


 鉄板にジュッと音を立てて広がる油。

 香味野菜と細めの蒸し麺が炒められると、甘辛いソースが加わって、一気に香ばしさが立ち昇る。


 一方で、出汁と醤油をベースにしたつけ汁が、別の小鍋で温められていた。


 すこし酸味の効いた特製の「追いソース」と、刻みネギと白ゴマ。


 つけ汁の中には、さっと炙った豚バラ、メンマ、煮卵。


 そして、出来上がった焼きそばは、油をしっかり切ってから、丸く盛りつけて出される。


 


「はい、焼きそばのつけ麺。お待ちどうさん」


「……わ、ほんとに焼きそばが、つけ麺に!」


 


 涼香は一口、麺を汁につけて口に運ぶ。


 香ばしさと、やさしい旨味が絡み合って、懐かしいような、新しいような、不思議な味が広がった。


 


「……うん、お父さんのより、だいぶ美味しいけど……でも、似てる」


「そうか」


 マサは小さく頷く。


「お父さん、いつも焦がしてたんだよね。めちゃくちゃで。でも、すっごく嬉しかったの。今じゃもう、あんな無茶してくれる人、いないけど……」


 涼香の目が、少しだけ潤んだ。


 


 忍が、そっと声をかける。


「でも、思い出は残ってる。こうして、その味がまた、生き返ったんだから」


 涼香は笑った。


「……うん。ごちそうさま。明日も頑張れるかも」


 


 



 


 夜が更けても、深夜食堂しのぶは、静かに灯をともしている。

 ひとときのやすらぎを、ひと皿の料理に添えて。


 



---


本日のレシピ:焼きそばのつけ麺


材料(1人前)


蒸し中華麺(細め)……1玉


豚バラ薄切り……50g


キャベツ、もやし、にんじんなど適量


ソース(中濃 or オリジナル)……大さじ2~3


ごま油……適量



つけ汁


鰹出汁……150ml


醤油……大さじ1


酢……小さじ1


ソース……小さじ1


ごま、刻みネギ、煮卵などお好みで



作り方


1. 焼きそばを通常どおり炒め、香ばしさが出たら取り出し、油を切る



2. つけ汁の材料を温め、器に注ぐ



3. 焼きそばを少しずつ汁にくぐらせながら召し上がれ!




アレンジポイント


ピリ辛が好きな方はラー油や七味をどうぞ


麺は少し硬めに仕上げるのがベストです





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