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第175話 トースト論争



夜も更けた頃。


ここは——

深夜食堂「しのぶ」。


カウンターにはいつもの顔ぶれ。


その中でひときわ声が大きいのが——

常連のヤマザキさんだ。


「いやぁ、朝はやっぱパンですよ、パン!」


忍が湯呑みを置きながら笑う。


「ヤマザキさん、朝はパン派なのね」


「そうなんですよ!しかもですね——」


少し身を乗り出して言う。


「トースターが違うんです!」


八恵子が反応する。


「トースター?」


「うちのは高級高性能トースターでしてね!」


ドヤ顔だ。


「マジでうまいんですからぁ!」


忍が興味を持つ。


「高級高性能って……おいくらくらいするの?」


ヤマザキさんは少し間を置いて、


「まぁ……それなりにしますねぇ」


八恵子も興味津々だ。


「そんなに違うの?」


「違いますよ!」


ヤマザキさんは力説する。


「外カリッ!中ふわっ!あれはもう別物です!」


その時だった。


マサがぽつりと呟く。


「……俺も朝はパンだな」


三人が見る。


「えっ?」


マサは湯呑みを置く。


「でもな——」


少しだけ笑った。


「食パンはフライパンで焼くぜ」


一瞬、沈黙。


「えぇ!?」


ヤマザキさんが目を丸くする。


八恵子も驚く。


「パンを?」


忍がくすっと笑う。


「マサさんらしいわね」


マサは立ち上がる。


「まぁ、見てろよ」


フライパンを火にかける。


油はひかない。


パンを一枚置く。


じんわりと焼ける音。


「強火じゃねぇ」


「中火でじっくりだ」


しばらくして裏返す。


ほんのり狐色。


さらにもう一度返す。


表面が軽く乾き、パリッとしてくる。


皿にのせる。


「ほらよ」


ヤマザキさんが手に取る。


一口。


サクッ。


少し間があって——


「……あれ?」


もう一口。


「……うまい」


マサがニヤッとする。


「だろ?」


ヤマザキさんが驚く。


「なんか……香ばしい」


八恵子も食べる。


「ほんとだ……水分がちょうどいい」


忍も頷く。


「素朴だけど、美味しいわね」


マサは腕を組む。


「トースターもいいけどな」


少し火を見ながら言った。


「パンは火との距離で味が変わる」


ヤマザキさんが苦笑する。


「いやぁ……」


少し考えてから言う。


「フライパン、欲しくなってきたなぁ……」


忍が笑った。


「うちは何でもありだからね」


深夜食堂には今日もまた、


どうでもいい話から生まれた


ちょっとした美味しさが広がっていた。



――――――――――


深夜食堂 しのぶ

定番レシピ


マサ流 フライパントースト


①フライパンを中火で温める(油なし)

②食パンをそのまま置く

③じっくり焼いて裏返す

④両面が軽くカリッとしたら完成


――――――――――


マサのひと言


「火があれば、旨くなる」

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