第17話『ゴロゴロ馬鈴薯のいも串フライ』
「マサさ〜ん、今日のジャガイモ、ちょっと大きめに切ってくれる?」
いつものように暖簾をくぐってきたのは、遅番明けの看護師・中野しずく。制服の名札は外していたが、目の下のクマがそのまま夜勤の証だった。
カウンターの奥で静かに包丁を動かす板前、マサさんが小さく頷く。
「四つ切りくらいで?」
「うん、ゴロゴロのやつ。串にさして、あれ、食べたくてさ」
深夜の常連たちがちらりと視線を向ける。
赤提灯の下、店名『深夜食堂しのぶ』の暖簾が、外の夜風に揺れていた。
「いも串フライですね。油、ちょっと足しますね」
おかみさんの忍さんが、にこりと笑って揚げ鍋に油を注ぎ足す。
小さな店にじんわり広がる、じゃがいもの甘く香ばしい香り。
カウンター越しに、揚げたての「いも串」が出されると、しずくの顔がぱっと明るくなった。
「わあ、ほんとにゴロゴロ!……いただきますっ」
串を手に取り、一口。
衣はカリッと。中のじゃがいもはホクホクで、芯までちゃんと火が通っている。
熱さにふうふう息を吹きかけながら、しずくは目を細めて微笑んだ。
「……これ、私のごほうびなんです。夜勤明けの」
そう呟いて、また一口。
塩と、ほんの少しのバター風味が利いている。ジャガイモそのものの味が、ちゃんと活きていた。
「……おかわり、いい?」
マサさんが静かに笑って、新しい串を準備する。
カウンターの他の客も、つられて同じものを注文し始めた。
ゴロゴロの馬鈴薯が、串にささってじゅうじゅう揚げられていく音。
深夜の静けさの中に、温かな“食の記憶”がまた一つ刻まれていった。
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本日のレシピ:『ゴロゴロ馬鈴薯のいも串フライ』
材料(2人分)
・じゃがいも(男爵またはメークイン)…中2個
・塩…少々
・衣(小麦粉・卵・パン粉)
・揚げ油…適量
・お好みでバター風味の塩、黒胡椒少々
作り方
① じゃがいもは皮をむき、四つ切りくらいの大きめサイズに切る。
② 串に刺して下茹で(またはレンチン)して火を通しておく。
③ 小麦粉・溶き卵・パン粉の順に衣をつけ、180℃の油でカラリと揚げる。
④ 熱いうちに塩か、バター風味の塩をふりかけて完成!
ワンポイントアドバイス
・衣を厚めにするとサクサク感UP。
・お弁当用には少し小さめサイズもおすすめ。
・カレー粉やガーリックパウダーでアレンジも◎!




