第140話『時の旅人編〜辛味の夜〜』
店内は常連客の賑やかな笑い声に包まれていた。
…その瞬間、時間が止まったように静かになる。
「マサ…来たな。」
しのぶは静かに頷く。
「そうね…来たわね。」
扉が静かに開き、暖簾がふわりと揺れる。
そこに立っていたのは、久しぶりの時の旅人カップル。
「お久しぶりです。」
彼と彼女は頭を下げる。
彼女が少し緊張しながら口を開く。
「しのぶさん、マサさん…今回は、何か“辛み”という味を試してみたいんです。」
彼も頷き、少し笑みを浮かべる。
「おすすめのものはありますか?」
しのぶが微笑む。
「ふふ、辛さの中にも美味しさを感じられる料理…マサ、任せていい?」
マサは包丁を握りしめ、軽くうなずく。
「もちろん。今日は特製、四川風麻婆豆腐でいこう。」
香辛料の香りが立ち上がり、フライパンの中で豆腐とひき肉が踊る。
時の旅人二人は、じっと鍋を見つめながら期待に胸を膨らませる。
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マサ流・四川風麻婆豆腐レシピ
材料(2人分)
絹ごし豆腐…300g
豚ひき肉…100g
ネギ…1本(みじん切り)
ニンニク…1片(みじん切り)
生姜…1片(みじん切り)
サラダ油…大さじ1
豆板醤…小さじ1〜2(辛さ調整)
甜麺醤…小さじ1
鶏ガラスープ…150ml
醤油…大さじ1
砂糖…小さじ1
水溶き片栗粉…片栗粉大さじ1+水大さじ2
仕上げ用
花椒…少々
ごま油…少々
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作り方
1. 豆腐は一口大に切り、軽く熱湯で下茹でして水気を切る。
2. フライパンに油を熱し、ニンニク・生姜・ネギを香りが立つまで炒める。
3. 豚ひき肉を加え、色が変わるまで炒める。
4. 豆板醤と甜麺醤を加え、香りが立つまで炒める。
5. 鶏ガラスープを加え、醤油・砂糖で味を整える。
6. 豆腐を優しく加え、2〜3分煮る。
7. 水溶き片栗粉でとろみをつけ、仕上げに花椒とごま油をひと回し。
8. 器に盛り付けて完成。
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店内の会話
しのぶ:「四川風の辛さって、ただ辛いだけじゃなくて、香りも楽しめるのよ。」
マサ:「辛さの中に豆腐の甘み、ひき肉の旨味、ネギの香り…これが本物だ。」
彼女:「あぁ…香りだけでご飯が進みそう!」
彼:「花椒の痺れる香りがクセになるな…深夜に食べるのにぴったりだ。」
カウンターに広がる香辛料の香り。
時の旅人二人は、久しぶりの深夜食堂で、辛さと美味しさの夜を楽しんだ。
彼女:「あぁ…ごちそうさまでした。深夜食堂しのぶで食べてから、未来のサブリだけの食堂だと、味気なく感じちゃう。」
しのぶ:「ふふ、それは嬉しいわね。」
彼:「また、寄らせて頂きます。では…お勘定と、これが未来のサブリです。宜しければ…。」
彼が懐中時計を見つめる。
「そろそろ戻る時間です。ごちそうさまでした。」
二人が扉の向こうに消えると、店内の時間が再び動き出す。
カウンターには、彼らが置いていった時代錯誤の金貨とサプリが静かに輝いていた。
マサがそっとそれを見つめ、しのぶと目を合わせる。
「やっぱり、あの二人が来ると、店の空気が変わるね。」
しのぶ:「ふふ、次はどんな味覚を求めて来るのかしら。」
香辛料の余韻と、未来からの贈り物が混ざった夜。
深夜食堂しのぶは、またいつもの静かな夜へと戻るのだった。




