第14話「ポテトサラダと納豆」
「……忍さん。今日のおすすめ、なに?」
暖簾をくぐり、のれんの向こうに座ったのは、仕事帰りのスーツ姿の女性。どこか疲れた顔だったが、常連の気配がある。
「いらっしゃい。マサさん、今日のおすすめ、ある?」
おかみさんの忍が厨房に声をかけると、無口な板前・マサが頷き、冷蔵庫からポテトサラダと納豆を取り出した。
「……ポテサラと、納豆?」
女性が目を見開く。
「これ、一緒に食べると、案外いけるんですよ」
そう言って忍が差し出すのは、ひと口大に丸めたポテトサラダと、刻みネギを加えた納豆。
「お好みで、七味少々。あと、納豆のタレも忘れずにね」
女性は箸で少しずつ、ポテサラに納豆をのせて、恐る恐る口へ――
「……あ。うまい、かも」
最初に感じるのは、納豆の粘りと風味。その奥から、ポテサラのまろやかなマヨネーズが舌に広がる。タレと辛子がちょうどよく、混ざりすぎず、分かれすぎず。
「これ、ありですね」
忍が笑って頷く。
「前に常連さんが、酔った勢いで『余りもんで何か作って』って言ってできた一品なの」
マサが口元だけで微笑むと、静かにもう一皿、焼き明太子を添えて出してくれる。
「……ああ、こういうの。独り暮らしだと、忘れちゃうんだよなぁ。なんか、ホッとする」
静かな夜に、納豆とポテサラが寄り添う。
それは、ちょっと不思議で、でもちゃんと“美味しい”夜ごはんだった。
レシピ:ポテトサラダ&納豆のせ
材料(1人分)
ポテトサラダ(市販でもOK)…適量
納豆…1パック
納豆のたれ・辛子…お好みで
刻みネギ…少々
七味唐辛子…少々
作り方
1. 納豆にタレ・辛子・刻みネギを加えてよく混ぜる。
2. ポテトサラダをひと口大に盛る。
3. 納豆を上からかけ、七味をひとふり。完成!
ワンポイント
・明太子や焼き海苔と合わせると、酒のつまみにも◎
・食パンに挟んでトーストしても相性良し!




