第139話『鰻の香ばしい香り』
カウンターに座る常連の佐藤さんが、ぼそりとつぶやく。
「この間さ、久しぶりに鰻屋に行ったんだよ。
うな重を頼んだんだけどさ…焼いてる香ばしい匂いがぜんぜんしてこなくてな。」
しのぶが眉をひそめる。
「それは残念ね…。焼き鰻の香ばしさって、香りだけでご飯を半分食べられるくらいだもの。」
マサが包丁を置き、カウンター越しに話す。
「うなぎはね、香りと焼き色が命なんだよ。
蒸して終わりとか、ただ温めて出すだけじゃ、あの香ばしさは出ない。」
佐藤さんが肩を落とす。
「そうなんだよ。焦げ目の香ばしさと、タレの香り…それが楽しみなのにさ。」
しのぶがそっと湯呑にお茶を注ぎ、微笑む。
「じゃあ今夜は、マサ特製の“深夜食堂風うな重”で、香ばしさを味わってもらいましょうか。」
マサは炭火を想定した小さなフライパンで、鰻を香ばしく焼き始める。
ジュッ、ジュッ、と音が立ち、タレの甘い香りが店内に広がる。
「どうだ、これぞ焼き鰻の香りだ。」
佐藤さんの顔がぱっと明るくなる。
「うわ…これだよ、これ!焼きたての香ばしさ…たまらん。」
しのぶも頷く。
マサ流・深夜食堂風うな重
材料(1人前)
蒲焼用うなぎ(生または冷凍でも可)…1尾
ご飯…茶碗1杯分(温かく炊いたもの)
青ねぎ…少々(飾り用)
山椒…お好みで
うなぎのタレ(2〜3人分)
醤油…大さじ3
みりん…大さじ3
砂糖…大さじ2
酒…大さじ2
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作り方
1. タレの準備
小鍋に醤油・みりん・砂糖・酒を入れ、中火で軽く煮詰める。
とろみがつく直前で火を止め、粗熱を取る。
※焦がさないように弱火でじっくり。
2. うなぎの下処理
生うなぎの場合は軽く洗い、キッチンペーパーで水分を拭き取る。
冷凍うなぎは解凍して同様に。
「水分が多いと香ばしく焼けないから注意だ」とマサ。
3. 焼きの工程
フライパンまたは魚焼きグリルを中火で温める。
うなぎを皮目から置き、両面に軽く焼き色をつける。
焼き色がついたら、タレを刷毛で塗りながら香ばしく焼く。
タレは数回に分けて塗ると味に深みが出る。
4. 仕上げ
ご飯を丼に盛り、その上に焼きあがったうなぎをのせる。
残ったタレを少量かけ、青ねぎと山椒を散らして完成。
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マサのポイント
香ばしさ命:焼き色を確認しながらタレを塗る。焦がさないこと。
蒲焼の味を引き立てるご飯は、炊きたてか、温め直してもふっくら感を維持する。
タレは濃すぎず、鰻の旨味を邪魔しない程度に。
山椒は食べる直前にかけると香りが立つ。




