第137話「蕎麦屋のカツカレー」
カウンターの隅、湯呑を片手に常連の原田さんがぼやく。
「先日さ、昔よく行ってた蕎麦屋に、二十年ぶりくらいに行ったんだよ。
改築されて、店も綺麗になっててさ。暖簾も新しくて、気分も良かったんだけど…」
しのぶが相づちを打つ。
「それは良かったじゃない。懐かしい味、食べられたんでしょ?」
原田さんは苦笑いして、首を振った。
「いやぁ…昔好きだった“カツカレー”を頼んだらさ、カレーが…なんかインスタントっぽくてね。
あの、蕎麦つゆの香りとカレーのコクが混じったやつじゃないんだよ。
時代ってやつかねぇ。」
そのやり取りを聞きながら、板前マサが包丁を動かす手を止めた。
「じゃあ、俺が作ってやりますよ。昔ながらの蕎麦屋のカツカレー。
今夜はマサ流でいきましょう。」
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マサ流「蕎麦屋風カツカレー」レシピ
材料(1人分)
豚ロース肉…150g
塩・こしょう…少々
小麦粉・溶き卵・パン粉…各適量(衣用)
サラダ油…適量(揚げ用)
玉ねぎ…1/2個(薄切り)
カレー粉…大さじ1
薄力粉…大さじ1
蕎麦つゆ(濃縮タイプ2倍)…150ml
水…150ml
みりん…大さじ1
醤油…小さじ1
はちみつ…小さじ1(隠し味)
白ごはん…茶碗1杯分
福神漬け…適量
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作り方とマサのアドバイス
1. カツの準備
豚ロース肉は脂身に軽く切り込みを入れて筋切りをする。
塩こしょうで下味をつけ、小麦粉→溶き卵→パン粉の順に衣をつける。
「カツは揚げたて命。だからカレーが仕上がる直前に揚げるのがコツだ。」とマサ。
2. 蕎麦屋風カレーあん
鍋に薄切り玉ねぎを入れて、弱火でじっくり炒める。
透明になったらカレー粉と薄力粉を加え、粉っぽさがなくなるまで炒める。
そこに蕎麦つゆと水を加えて混ぜ、みりん・醤油・はちみつで調味。
「蕎麦つゆがベースだから、カレー粉は控えめでいい。あとは香りで勝負だな。」
3. カツを揚げる
中温(170℃)の油でカツを揚げ、きつね色になったら引き上げて休ませる。
「揚げてすぐ切ると衣が剥がれるから、少しだけ待つのが大事だ。」
4. 盛り付け
ご飯を皿に盛り、切ったカツを乗せ、その上からカレーあんをかける。
福神漬けを添えれば完成。
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湯気の立つカツカレーがカウンターに置かれると、原田さんの目が丸くなった。
「おぉ…香りがもう、昔のまんまだ…」
しのぶが笑いながらビールを注ぐ。
「ほら、マサ特製だよ。懐かしい味、確かめてみな。」
一口食べた原田さん、目を細めて頷く。
「これだよ…この蕎麦屋の出汁とカレー粉の合わさった味…!
あぁ、なんか若い頃に戻った気がするなぁ。」
マサは黙って次の注文の準備に取りかかったが、その口元は少しだけ緩んでいた。




