第136話『鶏のパリパリ揚げ』
深夜食堂しのぶ。
暖簾をくぐると、衣のはぜる音と香ばしい香りが漂ってくる。
カウンターの奥では、板前マサが鶏むね肉を油に落とし、静かに時を計っていた。
「おっ、今日はまたパリッといくやつだな?」
女将しのぶがカウンター越しに覗き込み、笑みを浮かべる。
「ええ、鶏のパリパリ揚げ。味付けは衣だけ、潔くやりますよ。」
マサは菜箸を器用に操り、揚がった肉を一旦バットに上げた。
「二度揚げかい?」
「はい。一度休ませて、余熱で火を通す。で、もう一度油にダイブ…ほら、この音ですよ。」
ジューッという心地よい音が響き、店内に香ばしい匂いが広がる。
外の湿った夜風さえ、この香りを嗅ぎつけて入りたそうにしているようだ。
暖簾が揺れ、常連の健さんが入ってきた。
「おぉ、この匂いは…今日は当たりだな。女将、ビールひとつ。」
「はいよ。パリパリ揚げも付けとくかい?」
「そりゃもちろん!」
マサは二度目の揚げを終えた黄金色の鶏肉を網に上げ、サクッとした衣の音を響かせながら皿に盛りつける。
カウンターに置かれた瞬間、その湯気と香りに、健さんの顔がほころんだ。
「塩でいくか、レモンか、それともポン酢?」
「今日はレモンで頼む。シンプルが一番だ。」
しのぶがグラスにビールを注ぎ、マサが皿を差し出す。
深夜の小さな店に、ビールの泡と衣のパリパリが溶け合う音が響いた。
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鶏のパリパリ揚げ
外はサクサク、中はジューシー。味付けは衣だけで勝負する、香ばしい一皿。
材料(2〜3人分)
鶏むね肉 … 1枚
片栗粉 … 大さじ4
醤油 … 大さじ2(白だし・鰹だしに置き換え可)
水 … 大さじ3〜4(溶きやすい量で調整)
揚げ油 … 適量
作り方
1. 下準備
鶏むね肉は厚さが均等になるように開き、食べやすい大きさに切る(そのままでも可)。
2. 衣作り
ボウルに片栗粉、醤油(または白だし)、水を入れ、水溶き片栗粉状にする。
※白だしなら色がきれいに、醤油なら香ばしく仕上がる。
3. 衣をつける
鶏肉を衣にくぐらせ、余分な液を落とす。
4. 一度目の揚げ
170℃の油で表面が固まるまで揚げる。揚がったら一度取り出し、数分休ませる。
5. 二度目の揚げ
180〜190℃の高温でカラッと仕上げる。
きつね色になったら油を切って完成。
ポイント
味付けは衣のみ。肉の旨味を引き立てる。
二度揚げで衣がよりパリッと。
醤油ベースは香ばしく、白だしベースは色白で上品な仕上がり。




