表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/152

第12話:丸めない、たこ焼き



 


時刻は夜も深く、静まり返った街の一角。


看板の灯だけがぽつんと灯る店、「深夜食堂しのぶ」には、今日も誰かが扉をそっと開ける。


 


「いらっしゃい」


優しい笑顔の忍さんが迎え、奥でマサさんがちらりと視線を上げる。


カウンター席に腰を下ろしたのは、若い女性客。リネンのシャツにデニム、仕事帰りのようだ。


 


「……あのさ、たこ焼き、食べたくなっちゃって」


「たこ焼き?」忍さんが首をかしげる。「メニューには……なかったよね?」


「……でも、たこ焼き屋、もう閉まっててさ。なんか、あの、外カリ中トロで、ソースの香ばしいやつ……無性に食べたくて」


 


忍さんは少し困ったように笑い、奥のマサさんを見やる。


無口なマサさんは、ちらと目を上げると、静かに冷蔵庫を開けた。


 


「タコ、あるな」


「あるんかい」と忍さんが小さく笑った。


 


そして――


運ばれてきたのは、意外な姿の“たこ焼き”。


 


「……え、これ?」


「丸めてないけど、味は本気。たこ焼き風の、ふわトロ鉄板焼きってとこかしら」


 


鉄板で焼かれた小さな円形――見た目はまるでお好み焼きのよう。でも香ばしいソースの匂いと、かつお節のゆらゆらが、まさしく“たこ焼き”。


 


「……いただきます」


一口食べたその女性の目が見開かれる。


「熱っ……でもうまっ、うわ、トロトロ……え、なにこれ、ソースと生地の香りやばい……」


口の中で広がる懐かしい味に、彼女の表情が緩んでいく。


 


「昔ね、お祭りのたこ焼き屋さんでバイトしてたの。失恋しててさ、ソースのにおいで泣いたり笑ったりして……」


ぽつりぽつりと、そんな話が漏れていく。


 


「まるくなくても、たこ焼きはたこ焼き。少し形が崩れてても、心までほぐれていけばいいのよ」


忍さんがそう言って、カウンターに麦茶を添えた。


 


夜の深い静寂に、トントンと刻む音と、鉄板のジュウという音が、まるで心の調律のように響いていた。


 


 



---


本日のレシピ:丸めないたこ焼き風鉄板焼き


材料(1人分)


タコ(茹でたもの)…適量


薄力粉…大さじ4


水…80ml


卵…1個


和風だしの素…小さじ1


紅しょうが・天かす・ねぎ…お好みで


ソース・マヨネーズ・かつお節・青のり…お好みで



作り方:

① ボウルに薄力粉、水、卵、だしの素を入れてよく混ぜる。

② 紅しょうが、天かす、刻みねぎを加えて、タコもざく切りで投入。

③ フライパンに油を熱し、混ぜた生地を流し込む(中火)。

④ 両面をこんがり焼く。丸くせず、フリットのような形でもOK。

⑤ 仕上げにソース・マヨ・かつお節・青のりをかけて完成!


アドバイス:


丸めなくていいから、時短&失敗しにくい。


タコがなければ、ウインナーやチーズでも代用OK。


冷凍庫の余り物消化にも最適レシピ。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ