表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/154

第113話:『餡かけ焼きそばと、しのぶの隠れ家』



その夜は、少し肌寒かった。


外を吹く風が、まるで季節を巻き戻そうとしているかのように冷たくて、

店の暖簾も時折ふわりと舞い上がる。


「寒いねぇ、マサさん」


カウンター越しにしのぶがぽつりと呟く。


「……こういう夜は、“アレ”だな」


マサが火をつけながら言う。


「“アレ”?」


「お前がよく隠れ家で作ってたやつ。

 あんかけ焼きそば」


しのぶが一瞬驚いたように目を開き、

すぐにクスッと笑った。


「……覚えてたの?あれ、“誰にも教えない秘密”だったのに」



---


《しのぶの隠れ家》


それはまだ、しのぶがこの店に来る前のこと。

都内の片隅にある古びたアパート。

部屋は狭く、風呂もついていなかったが、キッチンだけは小綺麗にしていた。


「嫌なことがあった日はね、必ずあんかけ焼きそばを作ってたの。

 “あん”って不思議よ。

 どんなぐちゃぐちゃな具材でも、包んで、繋げて、まとめてくれる」



---


マサが火を操り、カリッと焼いた中華麺を皿に敷く。

中華鍋で炒められる豚肉、白菜、人参、きくらげ――

そこへだし、しょうゆ、オイスターソースを合わせた“あん”がとろりとかかる。


ジュワッという音と共に、湯気が立ち上り、

それだけで体の芯まで温まりそうだ。


「これよ、これ。

 この香りだけで、生きててよかったって思えるのよね」



---


店に常連の老人がふらりと入ってきて、

「お、これはいい匂いだ」と微笑んだ。


しのぶが皿を差し出しながら言った。


「今日はね、特別な“しのぶの隠れ家レシピ”の日なの。

 だから、これ食べた人は――もう秘密、共有しちゃった仲間よ」



---


《しのぶの隠れ家レシピ》餡かけ焼きそば(2人分)


材料


〈焼きそば用〉


中華麺(蒸し麺)…2玉


ごま油…適量



〈具材〉


豚こま肉…100g


白菜…2枚


にんじん…1/4本


きくらげ(戻したもの)…適量


ピーマン・たけのこなどお好みで



〈あん調味料〉


水…200ml


鶏ガラスープの素…小さじ1


醤油…大さじ1


オイスターソース…大さじ1


砂糖…小さじ1/2


酒…大さじ1


片栗粉…大さじ1(水で溶いておく)




---


作り方


1. 麺をカリッと焼いて器に盛る(両面きつね色に)。



2. 具材を一口大に切って炒める。豚肉に火が通ったら野菜も加える。



3. 調味料と水を加えてひと煮立ち。



4. 最後に水溶き片栗粉を回し入れ、とろみがついたら麺の上にかけて完成!





---


しのぶの一言アドバイス


> 「うまくいかない日も、とろみで全部くるんじゃえばいいのよ。

焼きついた麺も、焦げた人生も――案外、あんかけが救ってくれるから」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ