第106話:焼き肉サラダ
暑い。とにかく暑い。
七月の終わり。夜なのに、風はぬるいままだ。
厨房のマサが、冷蔵庫の前で氷水を取り出す。
グラスに水とレモンを入れてカウンターに出すと、
タイミングよく、扉の鈴が鳴った。
「こんばんはー……生きてるだけで、精一杯って感じだよ」
入ってきたのは、少しバテた顔の常連、山田。
白いYシャツの袖をまくり、クタクタに見えるのに、口は元気そうだった。
「マサ、なんかガツンとくるの食べたい」
「焼き肉……ってのは、無茶かな」
そう言って、笑う。
しのぶが顔をのぞかせる。
「……マサさん、なんとかなるかしら?」
「……何とか」
苦笑いして、マサはフライパンを手に取った。
◆
野菜を切る音、ジュウと肉が焼ける音、
マサは黙々と動きながら、冷蔵庫から冷えた器を出した。
そこに、千切りキャベツ、紫玉ねぎ、ミニトマト、水菜――
ひんやりした野菜たちを敷き詰めていく。
同時進行で、豚バラをサッと焼き、
酒、醤油、みりん、生姜、ニンニクで甘辛く炒める。
タレが焦げる寸前で、火を止めて仕上げ。
ジュワッと音を立てたままの豚肉を、
冷えた野菜の上にドサッと乗せる。
刻み海苔と白ごまをふって、完成。
「お待ち」
「……おお!すげぇな、これ」
◆
焼き肉サラダ
冷えた野菜と、熱い生姜焼きのコントラスト。
下には、隠し味で青じそのドレッシングが仕込まれている。
箸で豚肉をひとつ、サラダと一緒に口へ――
山田の眉が上がる。
「うっま……」
「冷たくて、あったかい……最高だわ」
しのぶが、冷えたウーロンハイをそっと出す。
「ほら、肉にも野菜にも合うでしょ」
「……しのぶさん、やっぱこの店、やめられないや」
笑って、山田はグラスを傾けた。
外はまだ熱を帯びていたが、
この一皿と一杯が、夏の夜をほんの少しだけ楽にしてくれた。
マサ特製・焼き肉サラダ
(1人前/調理時間:約15分)
■ 材料:
【野菜サラダ】
キャベツ(千切り):50g
水菜(ざく切り):30g
紫玉ねぎ(スライス):20g
ミニトマト:2〜3個(半分にカット)
青じそ:2枚(細切り)
【焼き肉(生姜焼き)】
豚バラ肉:100g(薄切り)
塩こしょう:少々
サラダ油:小さじ1
【生姜焼きダレ】
酒:大さじ1
醤油:大さじ1
みりん:大さじ1
おろし生姜:小さじ1
おろしにんにく:少々(好みで)
【青じそドレッシング(サラダ用)】
ポン酢:大さじ1
ごま油:小さじ1
青じそ(みじん切り or チューブ):小さじ1
【トッピング】
白ごま:少々
刻み海苔:適量
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■ 作り方:
①【下ごしらえ】
冷蔵庫に器を冷やしておく。
キャベツ・水菜・紫玉ねぎは氷水にさらしてシャキッとさせ、水気をしっかり切る。
青じそは細切り、ミニトマトは半分に。
②【焼き肉】
豚バラ肉に軽く塩こしょう。
フライパンに油を熱し、強火で豚肉を両面焼く。
脂が出てきたらキッチンペーパーで軽く拭き、
生姜焼きダレを加えて中火で煮絡める(約1分)。
③【ドレッシング】
ポン酢+ごま油+青じそを混ぜて、野菜に軽く和えておく。
④【盛り付け】
冷やした皿に野菜サラダをこんもりと盛り、
その上に焼きたての豚肉をのせる。
白ごま・刻み海苔を散らして完成。
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合わせるなら:
冷たいウーロンハイ or ハイボール
香り高い冷や酒
白ごはん(少なめ)も◎
マサのひとこと:
「熱いのに冷たい。矛盾も、工夫すればうまくいく」
しのぶのひとこと:
「疲れた人には、野菜だけじゃ足りないのよ」




