表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/154

第100話:サンドイッチ



孤独な深夜食堂『何だかんだで、独り飯。』


『深夜食堂しのぶ。』


深夜一時に灯る、暖簾の明かり。

名も知れぬ路地裏に佇むその店『深夜食堂しのぶ』は、

今日もどこか寂しげな、誰かの空腹と心を満たしていく。

メニューは少ないが、希望の味には応えてくれる。

――ただし、「その理由」があれば、ね。


優しそうなおかみ“しのぶ”と、無口だが腕の立つ板前“マサ”が静かに営むその店に、

今日もまた、一人の“客”が扉を開ける。

深夜のひととき、心と腹を満たす、ちいさなごちそうの物語。



---


第100話:サンドイッチ


「……あの、サンドイッチって、作れますか?」


午後11時を回ったというのに、外はまだ蒸し暑さを残していた。


深夜食堂しのぶの扉が静かに開いたのは、ふらりとした足取りの女性だった。

白いブラウスにベージュのスカート。手には小さなトートバッグ。


「うちは定食が主だけど……」


おかみ・忍は柔らかな声でそう言いながらも、マサを見る。

カウンターの向こうで黙って頷いた彼が、冷蔵庫を開け始める。


「じゃあ、ハムとキュウリ、それに……卵のサンドイッチで」


「……マスタード、入れる?」


「……はい。ちょっとだけ、大人っぽく」


 


しばしの沈黙。

マサの手が静かに動き、まな板の上にキュウリが転がる。


卵は荒く刻まれ、たっぷりのマヨネーズで和えられる。

その中に、忍が取り出したのは――刻んだ沢庵。


「これがアクセントなの。私の、ちょっとした秘密ね」


女性は、ふっと笑った。


 


出来上がったサンドイッチは、四角い皿に綺麗に並べられる。

ふわふわの食パンに、少しだけピリッとしたマスタード。

カリッとした沢庵の食感が、不思議と優しい。


 


「……うん、美味しい。これ、昔、母が作ってくれた味に少し似てる……」


女性の目が、少しだけ潤んでいた。


「きっと、優しい人だったんだね」


忍の言葉に、女性は小さく頷いた。


 


帰り際、彼女はトートバッグを肩にかけて言った。


「……このお店、なんて名前なんですか?」


「“しのぶ”っていうのよ。深夜食堂、しのぶ」


「また来ます。……母の味が恋しくなったら」


静かに、扉が閉まる。


今日もまた、誰かの記憶が、ひとつ温められていった。



---


本日のレシピメモ


【サンドイッチ:2種】


ハム&キュウリサンド


食パン(8枚切り)2枚


ハム2枚


スライスキュウリ適量


マスタード入りマヨネーズ(小さじ1)



たまご&沢庵サンド


茹で卵(固ゆで)1個


マヨネーズ大さじ1


刻み沢庵少々


食パン(8枚切り)2枚



たまごは潰しすぎないのがコツ。沢庵のカリッとした食感がアクセントに。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ