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死について  作者: rêve
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死者本人

連載予定

この気持ちも思想も別れられる。楽な生き方で、何も考えずに空でも見て、ぽっかり空いた心の穴も哲学とは別の、何かで埋まって。

そんなことができるなら手段は何でも良かった。それがたまたま「死ぬ」以外になかっただけだ。

言い聞かせた。何度も何度も。自分を騙して、「俺は間違ってない」で頭を埋めつくした。

2015年8月16日、珍しく雲もなく綺麗な空だった。当の俺はコップの水を一杯口に含み、辛い思い出も苦しい言い訳も、一気に飲み干した。そのコップに再び水を入れて、エボルブルスを挿して窓際に置いた。カーテンが揺れて風の吹く様子を眺めて。それでも涙は出なかった。

屋上へ登って、立ち入り禁止のカラーコーンを抜けて、下へ落ちないための柵を越えた。風も通って気持ちいい場所に俺が立っている

旅立つ為の第一歩。右足が宙を踏んだ。

次いで身体が落ちていく。

「後悔しているか?俺。俺は幸せだと思うよ。全部無くなるんだぜ、お前の嫌な記憶も思い出も結果重視のクソ社会も、悪者が得をする腐ったシステムも、忘れたかったことが全部忘れられるんだ。思考だって所詮他人のもの、お前のゴミ人生もここで終わりだ」

笑っていた。涙も出ていた。どうしようもなく嬉しかった。不意に黒い影が目に映った。ぐちゃぐちゃの黒色、まるで子供がクレヨンで落書きをしたみたいな形も無い、黒色の容態だった。


例えば「自分を騙している」のに「死が嬉しいと思っている」矛盾のように見えるが、それこそが人間というパラドックスである。

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