第4話 変装した姿での優雅な舞踏会
王都の中心に建つ豪華絢爛な宮殿。その大広間では、年に一度の大舞踏会が開かれていた。
貴族たちは最高級の衣装に身を包み、宝石をきらめかせながら、優雅に舞い踊っている。
そんな華やかな空間に、一人の女性が静かに足を踏み入れた。
「あの方はどなた?」
「見たことのない顔ね」
「なんて美しい...」
彼女の登場に、会場の空気が一変する。
長い漆黒の髪を金色に染め、エメラルドグリーンのドレスに身を包んだその女性は、まさに妖精のような存在感を放っていた。顔には繊細なレースのマスク。
その向こうに覗く瞳は、神秘的な紫色に輝いていた。
その女性こそ、変装したエリザベスだった。
「レディ・ステラ・ムーンライト」
と紹介された彼女は、優雅に会釈をする。その仕草一つ一つが、計算された魅力に満ちていた。
エリザベスは、ゆっくりと会場を歩き始めた。彼女の歩みに合わせ、周囲の視線が釘付けになる。
「踊っていただけますか?」
ある貴族が声をかけた。
エリザベスは微笑み、
「喜んで」
と答える。
ダンスフロアに立つ彼女の姿は、まるで夜空に輝く星のようだった。
優雅な舞いに、貴族たちは息を呑む。
踊りの合間、エリザベスは巧みに会話を操り、情報を集めていく。
「ええ、最近の株の動きは興味深いわね」
「魔法?ああ、少しばかり嗜んでおりますわ」
彼女の言葉の一つ一つが、周囲の興味を掻き立てる。
そして、エリザベスの目が、ある一点に釘付けになった。
そこには、かつての婚約者である王太子と、今や王太子妃となったソフィアの姿があった。
エリザベスの瞳に、一瞬だけ冷たい光が宿る。しかし、すぐに優雅な微笑みに戻った。
「さあ、幕開けよ」
彼女は心の中でつぶやいた。
優雅なる復讐劇の幕が、今まさに上がろうとしていた。