part7
ヤマネは明るい笑顔で教室に入りました。
クラスの皆んながヤマネを見ます。
担任「貴女がヤマネさんね。席に座ってちょうだい」
優しそうな女性の先生と笑顔で出迎えてくれた
クラスメイト達を見て、ヤマネは今後の学校生活に
思いを馳せます。これから7年間、皆んなとはずっと同じクラスにいることになります。
神学校にはクラス替えがないからです。
そしてヤマネは眼鏡をかけた男の子の隣に座ります。
ヤマネ「こんにちは!」
男の子「こんにちは」
ヤマネ「お名前なんていうの?」
ハイリー「僕はハイリー・マレン。よろしく」
ヤマネ「よろしくね、ハイリー!」
ハイリーはヤマネと同じ年なのにも関わらず、
すごく落ち着いている子でした。
そしてすごく素っ気ないです。
ヤマネも最初は、あまり仲良く出来ないかもと
思っていましたが、分からないことはなんでも
教えてくれるとてもいい子です。
ハイリーとヤマネは大抵の場合一緒にいるように
なりました。
最初こそ緊張は少なからずありましたが、
ヤマネは学校が大好きになりました。友達も順調に
増えてきて、ヤマネは沢山の笑顔を学校で見せます。
太陽のような眩しい笑顔です。
しかしヤマネは、あることが嫌いでした。
それはズバリ、テストです。
ヤマネ「お母さん、テスト帰ってきたよ」
お母さん「何点?」
ヤマネ「ジャーン!頑張って100点満点を取ったよ!」
お母さん「そう」
ヤマネ(…褒めてほしいなぁ。この前80点取ったら
すごく叱られたから、あんまり期待は
してなかったけど)
学校にはいくつものテストがありました。10年間学校に通い続けて、各学年末の時点で成績順位が
上位200位以内でいないと、進級することができない、とても厳しい世界です。
カシューはテストであまり良い成績を残せずに、
今年留年してしまっていたので、お母さんとお父さんに失望されていたのです。
その一方でヤマネは頭がよくどの教科でもかなりの
高得点を取ります。しかしヤマネはどんなに高得点を取ってもお母さんやお父さんに褒められることは
ありませんでした。ヤマネはそのことと、満点以外を
取った時に暴力を振るわれることに不満を感じていて、テストが嫌いなのです。
カシューが暴力を振るわれるところを見ると特に。
カシュー「お姉ちゃん、テストどうだった?
今回のテスト難しかったんじゃない?
あのメチャクチャ怖いあの先生か作った
テストだったんでしょ?」
ヤマネ「すごく難しかったけど、頑張って勉強して100点
だったよ!すごいでしょ!」
カシュー「お姉ちゃんすごいね!」
ヤマネ「因みにカシューの数学は?」
カシュー「82点だったよぉ。最後の証明問題にまで
手が回らなかったんだ〜」
他愛のないお喋りがこの2人にとっては1番の幸せな時間で、この暗い家の中での唯一の楽しみでした。
カシューの右腕には新しいあざが出来ていますが、
2人はあえて触れることはありませんでした。
こうして色々な辛い出来事がありましたが、ヤマネは
遂に学校を卒業しました。
しかもヤマネはハイリーと成績トップでの卒業です。
ヤマネはこの7年間を通して沢山の友神を作り、
充実した学校生活を送ることができたと、
卒業式の生徒代表の言葉で語りました。
ヤマネは過去のことを思い出して、ホール天井の光で
輝いている涙をひと粒流しました。
これからはさらに神の数も増えて、勉強も大変に
なりますが、ヤマネとハイリーにはこれからの未来へ
羽ばたく準備はできている様子です。
カシューもあと1年の学校生活を、将来的に高等学校で
姉と肩を並べても恥ずかしくないようにするために、頑張っていこうという姿勢が見られました。
ハイリー「これから高等学校進学だけど、
ヤマネはなんか目標とかある?」
ヤマネ「考えていなかったなぁ。…強いて言えば、
早く家を出てカシューと一緒に独立する
ことかしらね」
ハイリー「…そうか。これからもよろしく」
ヤマネ「こちらこそ。勉強以外でも助け合おうね!」
ヤマネの持つ卒業記念の花束の百合の花は、ヤマネを
労うかのように淡い匂いを放っていました。
そして卒業式でのヤマネのお母さんとお父さんは、
満足したような顔付きでした。
皆んなが皆んな幸せそうです。