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part40

ジル「おい…」


今日も今日とて大賑わいな『雷の国』は、

売る者と買う者が行き来していました。そんな中、

路地裏でタバコを吸うジルが、見窄らしい格好の女性に声をかけます。


ジル「………」

???「………」


両者共に何も言いません。互いに見つめ合いながら

無駄に静かな時間が流れました。


???「早く要件を言ってくださいよ…待ってるの

    ですが…ジル様」

ジル「俺を知ってるのか…」

???「この国の者ならば、金さえあれば何でも

    買えますからね」

ジル「……話は早い」


ジルは斧槍を女性の足下に置きます。それを見て

女性は目にも止まらぬ速さで、斧槍の先端を

ジルの首元に突きつけます。


???「まさか雇われる日が来るなんて信じられない

    です。いいでしょう。私が貴方の忠臣と

    なりましょう」

ジル「…本当にこれだけでいいのかよ」

???「私が無くした相棒(武器)を取り返して

    くださるのなら十分です。…では早速、

    雑草狩りと行きましょうか」

ジル「………」コクっ


ただ頷いたその瞬間に、ジルの目の前には巨大な

植物が生えていました。そのくらいのスピードで

瞬時に移動したのです。名前を知らない女性も、少ししてから、花の目の前まで来ました。

花からは今にも眠りに落ちそうなくらいの甘い香りがします。それも永遠に眠れそうなほどです。


ジル「…根から燃やすか」

???「なら私にお任せを」


斧槍を担いだ、星の輝く夜空のような髪を持つ女性が

詠唱と共に炎を花に浴びせます。


???『エフィリカ』


エフィリカは詠唱言語で炎の柱という意味が

あります。特にこれは炎の魔術と相性が良く、

ものすごい勢いで燃え広がりました。


???「ふぅ…この胞子はどうしますか?」

ジル「俺がやる…」


ジルは刀を構えます。少し瞑想したのちに、

旧市場を覆った重いほど甘い空気を断ち切ります。

ジルは自前の刀に魔術を含ませることを得意として

いました。これはれっきとした才能がないと出来ないものです。何故ならいつでも振るうような刀を、

自身の体格や動き、物理や相手の魔力に耐えるための強度など、考えればキリがないことを瞬時に考える

必要があるからです。今となっては技術力が進歩した

シチフクでは、それ専用の武器が作られるように

なりましたが、欠陥として、魔力が漏れやすいということがありました。まさに天賦の才でした。


ジル「…完了」

???「これがジル様の剣術…とても綺麗ですね」

ジル「…飯でも…食いに行くか」

???「後処理もやらずに済むと思ってるなら、

    この場にその考えを捨てていってください」

ジル「…分かった」


もう元からボロボロだった旧市場を最低限修復して

帰ることになり、表情が変わらないジルも、何だか

気乗りしない様子です。


???「私、名前をお伝えしましたっけ?」

ジル「…まだ聞いてない」

???「私はエフィリカ。さっきの詠唱と同じ

    名前です」

ジル「……どんな親に育てられたんだよ」

エフィリカ「魔術オタクの父が、無理矢理その名前に

      したそうです。たまたま開いていた

      魔術書に書いてあったのが

      『エフィリカ』だったと聞いています…

      自分で言うのもですがかなり酷いと

      思います…」


このシチフクにはいくつもの魔術が存在しています。

しかし、そんな魔術の名前を他人につけたり、

呼んだりするのは、あまり良いことではないのです。

何故なら、その魔術にその人がなってしまうという

考えがあったからです。魔術は確かに生活を豊かにしてくれるものでもありましたが、それと同時に、

何人もの人々を一度に殺してしまえるものでもあるのです。いい意味ではなく、悪い意味の方がどうしても目立ってしまうのです。


ジル「…これいつ終わるんだ」

エフィリカ「そろそろ帰りましょう。

      ご飯は奢ってくれると助かるのですが」

ジル「…いつ解雇されたいかを聞いてからにしよう」

エフィリカ「事前準備で私がガメツイ女だと知って

      おけばよかったのに」



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