part26
メアリ「改めてお姉様の用意した要項を見たけど、
結構リスキーじゃない?」
メアリはリリアに作ってもらったリストを見ながら、例の火山地帯を進みます。
すると足元に何かが当たります。
メアリ「ん?大きめの石?何でこんな道の中央に
あるんだろう?…あ、もしかして」
メアリが石を持って裏返してみると顔のような形に
石が張り付いていました。その顔は痛いっと言って
いるかのような顔でしたが、メアリの顔を見ると笑顔になりました。
メアリ「やっぱり『サーミトニック』だったのね。
足元を見ずに不注意でぶつかっちゃって
ごめんなさい」
サートミックは「いいよ」と言わんばかりの笑顔の
まま、メアリの元を離れました。それを見届けた
メアリも、教団に向けて歩き出しました。
メアリ「…着いた。着いちゃったよ…」
メアリにとってはもう来たくないところであったため
入ることに躊躇しますが、勇気を出して教団の扉を
開きます。
メアリ「すみませーん」
受付「あら貴女は、先日いらっしゃった方ですね。
再び願いを叶えにきたのですか?」
メアリ「違います。私は今日別の目的でここに
来ました。ですので例の部屋に入っても
いいですか?」
メアリは堂々とした態度で少し圧をかけながら
話します。これはリリアのメモに書いてある作戦の
ひとつで、『弱々しく接しない。つけ込まれるような隙を作らない』というものです。
受付「一体何の目的ですか?言っておきますが危険な
ことは遠慮していただきたいです」
メアリ「危険なこと?そんなことする訳ないじゃない
ですか。貴女方が何か私にちょっかいを
出してきたらするかもしれませんがね」
受付「…要件は?」
メアリは何処からともなく装飾がついた杖を取り出します。受付辺りの空気がどんどん重くなっていき、
まさに一触即発のような事態です。
メアリ「ここにいる『神の子』と直接対談したいわ。
まさか四六時中寝たきりだから話せません
なんて言わないわよね?だから通して
もらえるかしら?」
受付「…!なぜそれを知ってる?!」
これもリリアの作戦のひとつ、『教団最大の弱味を
持っていることをひけらかす』こと。こうする事で
なるべく教団に傷を自作してもらう、もしくは目的を
無条件で達成させるようにするためです。
メアリ「あら?何か私失言しちゃったかしら?
どうなんですかね受付さん?状況が飲み込め
たのなら早く通してくださいよ、受付さん…
いや教祖さん」
教祖「…そんなことまで知っているのならもう容赦
しない。生きて帰れると思うなよ」
何と受付のヒトは教祖でもあったのです。いよいよ
教祖も本格的に怒り、メアリに牙を向けます。
教祖はメアリに炎魔術を繰り出します。
三つのいかにも暑そうな球から炎の柱が勢いよく
メアリに向けて発射されます。メアリは杖をの先を地面にトンっと叩き、炎を消してしまいます。
逆にメアリはその杖で魔方陣を展開し、幾つもの炎の球を発射し返します。そしてそれが教祖の左肩に
掠ります。それに連鎖するように右腕、左脇腹、
両足首に当たります。痛みに悶えて教祖はその場に
座り込みます。
教祖「バカな…大した魔力の球じゃないのに何故
こんなに痛いんだ…」
メアリ「ただの普通の魔力が凝縮された球よ。
分かったらさっさと…」
その瞬間教祖は『神の子』がいる部屋に駆け込んで
いきました。
教祖「我らが神の子よ!どうか私の望みを叶えて
くださいませ!かの無礼者に怒りの鉄槌を!」
すると台座の上で寝ている例の赤い長い髪の女性が
起き上がります。
メアリ「よし、やっぱり頼りたくなるよね。ここまで
全部計画通りにことが進んでるわ。さて…
討伐しましょうか、囚われの『神の子』を」
『神の子』は何も言葉を発さずにメアリに近づいて
きます。手元をよく見ると鋭い鉤爪があります。
その足はどこか覚束なく、フラフラと歩いています。
メアリ「貴女はこんな生活でいいの?ひたすら能力を 使い続けて、その代償で寝たきりで
動けない。願いを叶え続けて、貴女は自身の
願いを他の誰かに叶えてもらったことが
今までに一度でもあったかしら?貴女は
利用されてるだけ。それは貴女も分かって
いるでしょう?」
神の子「……………ワタシ」
メアリ(今何か喋った?言語能力はあるとはいえ、
あんな状態でよく喋れるわね。6年ぶりに
目が覚めたのに、頭は働くのね」
神の子「……………………オ………オカー……サン」
メアリ(…本当お姉様、貴女は一体どこまで見通して
計画しているのですか。ここまで来ると正直
怖いですよ)
メアリは『神の子』に向かって無防備で進みます。
メアリの脇腹に鉤爪がぶっすりと刺さっても、何も
気にしません。
メアリ「こんな風に何年も囚われていいように
使われても、お母さんに会いたいと思う
貴女の気持ちは、何となく分かる気がする。
私ももう何年もお母様に会ってないから、
早くお会いできたらいいのにって思ってる。
でも私は貴女には無いものがある。
それは救世主よ。私にとってただ1人のお姉様
は救世主なの。貴女はどうかしらね。
貴女も救世主とまでは言わないけど、今掴み
取ることができるものに縋ってもいいんじゃ
ない?貴女自身が救世主ではなく、ただの
魔者として生きていくっていうのはどう?
貴女の望みを叶えたいと思わないの?
…それとも、貴女はこうしてチヤホヤされて
いる方が好き?」
その言葉に反応した『神の子』は勢いよく鉤爪を抜き取り、顔に突きつけます。一歩間違えれば眼に刺さりそうになる位には近いです。
神の子「…アンタに………とやかく言われる…………
筋合いはない。もう……取り返しが………
つかないの…」
メアリ「お母さんのこと?それとも、もっと利己的な
願いがあるのかしら」
神の子「救世主?願い?……………笑わせてくれるわ」
すると『神の子』の頭から耳が、尻の方から尻尾が
出てきました。さながら獲物を捕食する寸前の狼の
ようです。
メアリ「それが貴女の本来の姿?」
神の子「アンタのせいよ。…………本来ならもう、
全てを見なかったことに…誰の言うことにも
……従いたくない。でも…ここまで私を汚い
足で踏みつけるなら、アンタが私を導いて
くれる、俗に言う救世主なのよね?」
メアリ「うーん、どうかしら?」
神の子「ここまで私を怒らせるだなんて、アンタは
よっぽど死にたいのかしら?…今回だけよ。
アンタに借りを作ったからそれを挽回する。
アンタが責任取れよ最後まで」
メアリ「貴女の救世主探しが始まるわね。その前に
お母さん探しが先かしら」
神の子「だからアンタが言ったことでしょうが。
そんなこと知ったことじゃないわ。
後のことは後で考える」
吹っ切れたように見える『神の子』は教祖の前に立ち塞がります。
教祖「裏切る気か神の子よ!私たちには貴女しか いないというのに!この恥知らずの子が!!」
教団員A「所詮はやはり恥知らずの末裔ね!」
教団員B「願いを叶えることに意義があるはずなのに
それを捨てる気か!」
神の子「…この際言っておくけどさ、いくら小さい
子だからといって拉致して監禁するの、
はっきり言ってアンタらの方が恥知らず
だからね」
教祖「我々は選ばれた民だ!貴様の存在価値を見出す
ためにも、我々の繁栄のためにも、
貴様を生かし続けたのだぞ!!その恩義と
目的を忘れたとは言わせない!」
神の子「要するに私利私欲100%ですって言いたい
のね。そんなことは分かってるわよ。
じゃあ恥知らずの私なりに、アンタたち
恥知らずを骨の髄まで粉砕して#○×^〆¥
してやるわ。理由は簡単よ」
すると『神の子』は軽蔑の視線を教団に向けました。
掌の中には明らかに危険そうな燃え上がる物質が
あります。
神の子「この神の子モドキの逆鱗に触れたからよ」
その物質を教団に向けて放つと教団の建物はあっと
いう間に燃え上がり、教団員たちも燃えています。
メアリと『神の子』はその阿鼻叫喚の様子をしばらく見守りました。『神の子』はメアリに問います。
神の子「私はこれから自由になれるのよね?」
メアリ「そうね。貴女はこれから何でも出来るわよ。
…そこで何だけどね、私の仲間になって
ほしいのよ」
神の子「はぁ?何で仲間にならなきゃいけないのよ?
しかもよりにもよってアンタの」
メアリ「さっきから聞いて思ってたけど、貴女は
すごく口が悪いのね」
神の子「他人に自分のことをとやかく言われる筋合い
なんかないわ。何てったって私は恥知らず
だからね」
メアリ「あ、ちょっと待ってよ!」
どこかに歩いて行こうとする『神の子』の前に慌ててメアリは走りました。
メアリ「せ、せめてさ何をするかだけでも聞いてよ」
神の子「聞くだけね。返答は却下。早くして」
メアリ「え〜!」




