part19
ヤマネ「それでこそって、どういうこと?」
厄神の放った一言に、ヤマネは問いかけます。
厄神「そのままの意味だ。考えてもみろ。
お前はこれからここにある全ての世界の
統治者となる。名君か暴君かは分からないが、
お前の名は遅かれ早かれ、全ての世界に
知れ渡るだろう。お前はもう皇帝神だからな。
お前には『世界を創り、それらを護る』
大層ご立派な役割があるんだよ」
ヤマネ「貴女は、一体何者なの?」
その一言で、厄神は言葉を詰まらせます。
どうやら深入りされたくないような事らしいです。
厄神「…私は災厄をもたらす。これ以上関わるのは
野暮だな。お前をある場所に案内してやるから
私について来い」
ヤマネは質問の答えを有耶無耶にさせられて不満を
覚えつつも、厄神に着いて行きました。
厄神に連れられて着いた場所は、真っ白で何もない
空間です。しかし、目の前に淡い青色の光を放つ、
浮遊した物体があります。まるで霊のようです。
ヤマネ「何これ?」
厄神「お前の相棒だ。コイツがお前に手取り足取り、
この世界について、教えてくれるだろう」
霊?「…アタシ、そんなの聞いてないんだけど」
ヤマネ「あなた…喋れるのね」
霊?「当たり前よ。アタシもこう見えて、有象無象の
中の1柱の神なんだから」
ヤマネ「何の神様なの?」
霊?「空間を司る神、シーレよ」
厄神「良い奴かはわからないが、まあ多分いい奴だ。
ほら、さっさと契れ」
ヤマネ「契る?何を?」
シーレ「はあ…そんなのも分かんないの?」
厄神「これだから新参者が…」
ヤマネ「そんな会社の口うるさい上司みたいなこと
言わないでよ…」
すごく平和な会話もヤマネにとっては、唯一神から
救いの手を差し伸べられているくらい、有り難いものでした。
そして厄神はヤマネの掌にシーレを乗せます。
厄神「仕方ない。私が今日はお前と空間神の契りの
仲介をしてやるが、次は自分でやれよ」
そう言って厄神は儀式言語を使います
厄神『良い子よ良い子、帰らぬ良い子、
私の宮中、良い子はその中、
これがいつ、私に起ころうが、
この隔たりはきれぬ、断てぬ』
すると真っ白な空間が急に大自然に変わりました。
涼しい風と、苔むした木々、照らす太陽。
立っているだけで、自然と癒されます。
厄神「ほう…これがお前の理想の体現か。
お前はこんな居場所を望んだのか?
ずっと前から、あの封印の時から」
ヤマネ「そうね、私もあんな感じの景色が
好きだからね」
シーレ「ふーん、なんか訳ありなの?」
ヤマネ「…………」
厄神「コイツは、世界の半分を破壊し尽くした
大犯罪者だ。私の力を渡しておいて、
そのまま捕まり終わるのは、癪に障るからな、
死ぬ前の最後の反抗だ」
ヤマネ「死ぬ?!アンタ死ぬの?!」
シーレ「いきなり叫ばないで、五月蝿い」
ヤマネはひどく驚いて、厄神に詰め寄ります。
厄神は自分の腕をヤマネに見せます。
その腕は皮膚が爛れて、力が入らないようでした。
厄神「私はある事情で、力を持っているのに
使えないでいた。だからこそ、お前に譲って、
この強大な力を他者により消失させないように
した。その強大な力を封印ごっこで鎮めようと
してくるあの里の連中は馬鹿みたいだったが、
初めは流石に私でもビビったな。
お前ら封印方法知ってるのかよってな」
シーレ「何でコイツに力をやったの?」
厄神はヤマネをじっと見つめます。物悲しいように。
厄神「哀れだと思ったから。かつての私と一緒だと
思ったから。だから譲った」
ヤマネ「私がそんなに惨めに見えたの?」
厄神「あまりにも下手くそな封印の舞で、心配に
なるくらいは」
ヤマネが今にも殴りかかりそうな右腕を必死に
押さえつけて問います。
ヤマネ「何で死ぬの?」
厄神「私はもう死んでいる。建前ではな。
私は厄神に堕ちた身だ本来ここにいては
いけない。…丁度今、こっちの世界にいれる
限界が来てしまったらしい」
シーレはふわふわした体を使い浮遊して、厄神の頭を
ペシペシします。
シーレ「じゃあ早く死んでくんない?今から主人と
世界つくんないといけないんだから。
未練たらたらな奴は嫌われるわよ」
厄神「まあ、あまり急かすな。
ヤマネに最後に言いたいことがあるからな」
厄神はヤマネに寄ってきます。相変わらず髪の毛は
整ってなく、眼は死んでいます。
厄神「お前は新しい存在になれる。
創り生み出すことができる。
物であっても、概念であっても、生命だって、
お前のお膝元。はっきり言っておく、
お前は強い。その次元は計り知れない。
それがお前の…『創成神』の実力だ。
お前には、居場所を作る権利がある。
その才覚がある。お前はもう…」
充分立派だ
その言葉を残して、厄神は灰燼となり、風に吹かれて消えていってしまいました。
ヤマネは少しの間、沈黙でした。もちろんシーレも。
ヤマネ「創り生み出すことができる…か。
…シーレ、私、この世界で色んなヒトと
暮らしたい!色んなものを見たいの!」
シーレ「分かったわよ。じゃあある程度文明とか
いるんじゃない?時間かかるわよ?」
ヤマネ「それすら超えてみせるわ」
そう言ってヤマネが左手をかざすと、時間の流れが
突然早くなりました。あっという間に、人々が、
安定して生活できるようになっていました。
ヤマネ「すごい…!本当にできちゃった!
きっと私の力なら、もっと色々
できるはずね!」
ヤマネの顔には満面の笑みが、シーレの顔には驚愕の表情が浮かんでいました。




