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幕間・ある少年の追憶
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幼い頃のある日、何となしに手に取った木の棒の感触を覚えている。
棒を振り回すと、不思議と気分が高まり、何かを殴りつけたい衝動に駆られた。
そしてある日、自分は彼を思い切り殴りつけた。
少し上の年ごろの、身体の大きくて気の強い男の子だった。
彼は仲間と一緒に、子豚のように丸々と太った気弱な男の子を蹴り回していた。
だから、思い切り殴りつけた。
嫌な感触がして、意気揚々と喚いていた彼は地面に転ぶ。
垂れる鼻血が白い歯を赤く染め、彼は呼吸もままならないほどに咽び泣く。
そんな様に、妙な快感を覚えた。
ふと気づくと、彼らは恐ろしいものを見るように自分を見ていた。
虐められていた、彼でさえも。
あの頃の自分は、その意味をまだ理解していなかった。