星座の観測
街から少し離れた丘の上の雪原で、十数人の子供たちが引率の先生の指導の下、星座の観測を行っていた。
毛糸の帽子とマフラーや手袋にダウンのジャンバーなどを着込み、モコモコ状態の子供たち。
大部分の子供たちは肉眼で冬の夜空を見上げているが、数割程の子供たちは双眼鏡や買って貰ったばかりと思われる真新しい天体望遠鏡で夜空の星座を観測していた。
「オリオン座見つけたー」
「あれがオリオン座のペテルギウスだとー……、あれとあれがシリウスにプロキオンで冬の大三角形ね」
「あーあれがエリダヌス座かぁー」
「え? どこどこ」
子供たちは見つけた星をノートにえんぴつで書き、星が所属する星座の名前をその脇に書き込む。
次々と星座を構成する星を見つけ歓声を上げる子供たちに、丘の麓で夕食の準備をしていた保護者たちが声を掛けた。
「「「ご飯出来たわよー!」」」
「エー、もうちょっと見ていたい」
もう少し見ていたいと文句を言う子供たちを引率の先生が宥める。
「冬の夜は長いんだ、夕食の後また観測を行いなさい」
「「「ハーイ」」」
ゾロゾロと丘の麓に向かう子供たち。
引率の先生が雪原を見渡すと、1人の男児だけが天体望遠鏡で夜空を見上げたまま動かないのに気がついた。
「ほら、君も夕食を食べに行きなさい」
「行きたいんだけど、行くとあの星がいなくなちゃうから」
「え? どういう事?」
「天体望遠鏡のピントをちゃんと星に合わせているのに、暫くするとピントからズレるんです」
「えーと、どの星だい?」
男児が天体望遠鏡の前から退き代わりに先生が天体望遠鏡を覗く。
「あ! 此れか…………、此れはもしかしたら未発見の隕石を見つけたかも知れないよ」
「ホントに!」
「ああ、天文台に問い合わせてからになるけどね」
「ヤッター!」
彼等は知らない、男児が見つけた巨大な隕石が数カ月後地球に激突し、人類が滅亡することを。