96.質問
「領主様」
「フラン。リガルでいいですよ」
「早速、領主についても学んでくれたのですか?」
「まだなの。エルディランドゥさんが領主様って言ってたの」
翌昼、颯爽と現れたリガルにフランがあっさり告げる。
「そうですか・・・」
「あのね。私、好きな人がいっぱいいるの。皆と結婚するとしたら大きなお家が必要でしょう? ちょっと困るねってミハと話していて、どうしたらいいの?」
「え、ええーっと。フラン結婚しても同居しない場合もありますよ」
「そうなの? それなら、皆と結婚できるね。良かったー」
リガルの心境としては良くないのだが、フランが安心したようなので、今日の所は良しとした。
また、次の日。リガルがフランに熱烈に出迎えられた。
「昨日、結婚しても別居する場合もあるって言っていたでしょう?それなら、なんで結婚するの?」
「あ、愛しているからですね」
「?一目惚れだから、結婚するんでしょう?好きだからだよね。好きとは違うの?」
「明日の宿題とさせて頂きたいです」
リガルは自分の首を絞めているとしか思えない。質問に答えれば、答える程、追い詰められていく・・・。だが、誰も助言はしない。一目惚れで浮かれていることを差し引いても、フラン相手に焦りと急ぎは禁物だ。しかもどう見ても、分かっていない相手に結婚を迫るというリガルの選択肢は、フランの家族にとって有り得ない。そのことをリガル自身が、気が付かなければいけなかった。
ヒイは出来ない人に要求はしない。
「愛しているとは、好きの最上級です」
「好きは好きじゃないの?」
「結婚したいくらいの好きということです」
「好きだから、結婚するんじゃないの?」
リガル、撃沈。まだ幼いフランに直接的な表現を使わないことだけは褒められるが、それだけだ。
翌日、リガルは手に何か持っていた。
「辞書を持ってきましたよ」
「じしょ?」
「ええ。言葉の説明を確認できる書物です」
「そうなの」
「ここに、友愛、親愛、大好き、愛しているがあります」
「あるね」
「読んでみて下さい」
恥ずかしかったのか、リガル撤退。周りの視線がどんどん生温くなっていく。
また、次の日。
「読みました?」
「読んだよ。違うのは分かった」
「分かって頂けましたか!」
リガルの表情が喜色に染まり、フランの表情は不思議に染まっている。
「なにを?」
「え、私の気持ちを・・・」
「どうやって?私、気持ちが分かる能力は無いよ」
「あ、ああ。そうですよね。では、また明日」
疑問顔のフランを残し、リガルは後退した。




