95.手狭
今日も一日頑張るぞと気合を入れているフランは、昨日のことは頭の片隅にも残っていないように見える。フランから見たケイとマルクはまだ様子がいつもと違うようで首を傾げ、問い掛ける。
「ケイ、マルク。今日もいつもと違う感じがするけど?」
「なんでもない」
「俺も」
「そう?」
ケイとマルクは一足飛びにフランに追い越されたような気がしていた。だが、全く様子の変わらないフランに逆に感心する。
「勝ち負けじゃないけどよ」
「うん。でも、フランすげえ」
「だよな」
朝食の準備に余念がないフランの耳には入っていなかったのか、聞き返される。
「なにか言った?」
「いいや」
「なにも」
「ねえ。私って、いっぱい結婚するのかな?」
ふと考えに至ったという感じで言われたので、思わず二人は聞き返す。
「へ?」
「ええ?」
「私ね。ケイのことも、マルクのことも、最初はよく覚えていないけど、きっと最初から好きだし。勿論、ヒイさんも最初から好きだったし。ニカも、ミハもアキもトウさんも、クロもエルディランドゥさんも好きだよ。んー。テレーズとマロウは好きだけど、徐々に仲良くなったから一目惚れじゃないから結婚にはならないと思うの」
「へー」
「ほー」
ケイとマルクは言葉が無い。
「重婚いいの?」
「じゅうこん?」
朝食にやって来ていたミハが思わず会話に入って来た。フランとケイ、マルクは揃って聞き慣れない言葉を聞き返す。
「二人以上で結婚することを重婚って言うんだよ。ミハちゃん。街の決まり、忘れちゃった?結婚はお互いの意志で行い、離婚も同様とするで終わりだから。種族的に色々な形があるみたいだよ。結婚という概念が無い人達もいるだろうしね」
「はー。そうなんだ。でも、フラン。そんなに沢山と結婚しちゃったら、家、狭くなるよ」
「ミハ・・・」
エルディランドゥも流石に言葉を掛ける。そういう問題では無いような気がするが、フランはミハと感性が近いのか、あっさり同意した。
「そうだね。それは大変」
「うん。もう少し考えつつ、リガルさんに色々聞いたらいいんだよ」
ミハが笑顔で助言するが、責任回避且つフランにそのままでいて欲しいという思いも載せてのリガルへの華麗なる横流しだ。やはりフランはお互いの意志があっての結婚という事が分かっていないようだ。朝から大変なことを聞いてしまったかのようなテレーズとマロウを置き去りにしつつ、いつもの食事が始まった。




