89.恋に
フランは今日も腕を揮っていた。身体をしっかり動かせば、金属がそれに答えてくれる。しかも、ご飯は美味しいし、ぐっすり眠れる。今日も朝から絶好調だった。
その朝は自分以外がちょっといつも通りでは無かった。
「二人ともどうしたの?」
「なんでもない」
「なんでもねえ」
寝て起きたら、ケイとマルクの様子が変だった。まあ、「なんでもない」って言っているし、二人の様子が多少変でも別にいいかと即座に思い直す。
「そう」
フランのあっさりした頷きに、マロウが入る。
「そうは見えぬが?」
「気のせいだ」
ケイの素早い返しの後、すぐに朝食の準備が出来たと呼ばれて曖昧になってしまった。
マルクは腑に落ちない思いを抱えて食堂へ手伝いに出た。そこで思わずコーリアに尋ねていた。
「なあ、素敵ってああなりたいってことか?」
「え?なに?」
「昨日の・・・」
「ああ・・・うん」
コーリアは照れた顔で同意した。
「ふーん。ミハみたいになりたいのか?」
「あっ、ううん。違うの。そこまで高望みはしてないの。素敵な相手ができたらなぁって・・・」
コーリアの言葉にマルクはさらっと告げる。
「高望みじゃないだろ。普通に望めばミハみたいにはなれると思うぞ。ミハの何を目指しているかにもよるだろうけど」
「え?そうなの?私、あの、その・・・ね」
「なんだ?強さ?外見?奇妙奇天烈さ?」
「きみょうきてれつ・・・?」
マルクはコーリアからの答えだと思い、頭を抱える。
「あー。それは、それだけは難しいと思うし、真似しない方が良いとも思う」
「あの、違うの。きみょうきてれつってなに?」
マルクは思わずほっとして、意味の説明を始めた。
「そっちか!んー。すっごい変ってことだ」
「それは目指してないかな」
「良かった。あ、客だ。ごめん」
「ううん。仕事に戻るね」
マルクは何も解決していないが、清々しい気持ちで仕事に戻り、帰る頃には忘れてしまっていた。




