86.無理せず
ヒイの設置した自分達には全く影響はないが、怖そうな道具類にケイが口を開いた。
「マルク、色々気を付けろ」
「分かってる」
ケイとマルクがお互いに頷きあう。
「え?」
コーリアが疑問を浮かべるが、ニカがにっこり笑って誤魔化す。テレーズはシシリアと仕入れについて話している。
「マルク、帰りに迎えに来るから、料理の勉強をよろしくね」
「ああ」
ヒイがマルクに近づきこっそり告げる。
「危なくなったら、片っ端から投げて、助けを呼ぶこと。無理しないこと。いい?」
「うん」
マルクが気圧されしたようで何とか返事をする。
冒険者ギルドで書き方教室を始める準備が整い、まだ誰も来ない教室でケイがヒイに聞いた。
「なあ、なんでアークを冒険者に誘わなかったんだ?」
「看破では見なかった?」
「冒険者にしない方がいいってとこまでは見たけど、人の事情に踏み込むのもどうかと思って・・・。俺、見すぎたらなんかぽろっと言っちゃいそうで、そこの所だけ聞いておきたいんだ」
「流石だね。それも看破じゃないかな」
「そうか?」
「冒険者はなりたいんだったら止めないんだけど、そういう訳じゃなくてそれ以外に知らないというか偏っちゃっている感じかな。お父さんと周りの影響だろうね」
「別に親が冒険者になって欲しいって言ってたり、思ったりはしてなかっただろ?」
「冒険者の周りには冒険者が集まるからね。お父さんは多くの人に慕われてたから・・・」
ヒイが過去形で告げたことでケイが反応する。
「ああ、・・・亡くなっているのか?」
「そう見えるね。ご家族は信じて待っているけど、半信半疑みたいだよ」
「伝えるのか?」
「ううん。それは然るべき時に然るべき人が」
「そんなもんか」
「そう、それでね。マルクさんが料理している所を見て貰って、冒険者以外の職業の人がいるってことを少しずつ知っていける余裕が出来ればなと。それでも、冒険者をやってみたいなら止めないよ」
「分かった。それだけ分かれば充分だ」
「マルクさんにはそれとなく教えてあげておいてくれる?それと、フランさんが鍛冶をやっているというのも世間話に混ぜる感じでアークさんに聞かせてあげて」
「おう」
「ありがとう。ケイさんは頼りになるね」
ケイの半眼だけが返って来た。




