82.食堂にて
「うーん。煩そうだし、口も塞いでおこう」
ニカは素早く三人の口に封をする。こうした便利道具はヒイがせっせと作っているので、色々と豊富にある。「よし」と独り言を口にすると、四人を店に入れる。
マルクが一塊になっている男たちをなるべく視界に入れずに聞いてくる。
「大丈夫だった?」
「平気だよ。さて、コーリアさん。それとも、コーリアさんのお母さんに確認かな。あ、私はフレーズさんのお孫さんと結婚しましたニカです」
「シシリアです。息子を送って頂き、ありがとうございます」
「あ、この人達、どうします?一旦、お店の外に置いておいて、後から喧嘩を売られたと然るべき所に突き出します」
ニカはシシリアの返事を待つことなく、外へ張り紙をして置いておく。男たちが外へ出ると力づけられるようにシシリアが口を開いた。
「本当にありがとうございました。夫の知り合いと言われて居座られていまして・・・。お恥ずかしい」
「ありがとうございました」
シシリアとコーリアが揃って頭を下げる。自分たちでなんとかしたくて頑張ったが、アークにまで影響が出そうでどうにもならなくなってしまったと告白した。
「お役に立てたなら、良かったです」
「是非、お礼を」
「はい。私たちでできることなら!」
アークはぽかんとした表情で視線を行ったり来たりさせている。
ニカはにっこり微笑んだ。待ってましたとばかりの笑みだと分かったのはマルクだけで、しかも嫌な予感がしていた。
「ええっと、そこまで言って頂けるなら・・・。マルクに料理を習わせて頂けませんか?」
「!!」
「それくらいでよろしければ」
「勿論、いいよね。お母さん」
懐事情は厳しいが、金銭的なお礼をと考えていた二人は拍子抜けしたようだ。一方のマルクは驚愕だ。そのマルクがニカに抗議する前に、ちょっと呼ばれる。
「マルク、考えてみて。というか、消去法。私達はここの料理を誰かには学んでもらいたいと思ってたんだ。それがどうして必要なのは分かる?」
「・・・材料?」
不安そうに答えるマルクに正解とほほ笑むと続けた。
「ヒイちゃんがいればお弁当も大丈夫だけど、それぞれが独立して行きたい所で稼ぎたいと思ったら?こちらの材料と料理に慣れる必要があるよね。そこからはお弁当で培った色々を使えば何とかなる」
「ああ」
「それで、それができて、料理が学べる人物は誰でしょう?」
「・・・」
「マルク素晴らしい。選ばれたんだよ!」
「嬉しくねー」
マルクは仕方がなく納得した。ケイとフランは料理があまり得意ではない。マロウの腕は未知数だが、料理はやったことが無さそうだ。テレーズとエルディランドゥは結婚相手が飢えさせない。残るは自分だけだった。
ニカは詳細をシシリアと詰めると、男達を転がしながら何処へ突き出そうか考える。
「マルク、ちょっと冒険者ギルドに転がしてくるから、先にフレーズさんの店に帰っていていいよ」
「分かった」




