81.届ける
「はいはい。暴れない」
「本当に、すみません。もう、すぐそこですので、大丈夫です」
「いやいや。最後まで責任持つよ。泣かせちゃったし」
「泣いてない!!」
ニカがアークの両手を持ち上げて連れて行く。空中を歩いているような態勢でアークが暴れるが、ニカも冒険者として過ごしてきたので物ともしていない。自分でも、身体作りが出来ていることを実感して嬉しく思っていると、到着した。
「マルク、お昼食べて帰ろうか?」
「いいけどよ」
食堂に着いて、唐突にニカがマルクに声を掛ける。マルクは腑に落ちないながらも了承する。それに慌てたのがコーリアだ。
「あの、ここで」
「こんにちはー」
「ああん?」
「なんだぁ?」
「客かー」
ガラの悪い声がする。お昼時にも関わらず混んでいるようには見えず、冒険者らしき三人の男が食堂を占拠していた。ニカだけが店に入ると告げ、子供達三人は外で待たせておき、こっそりコーリアへ母親を裏から連れ出すように耳打ちする。コーリアが顔色を悪くしながら頷き走る。マルクにはアークを渡してある。
食堂に入ったニカが首を傾げつつ、聞く。
「常連?」
「俺たちに聞いているのか?」
「そうに決まっているだろ!」
「なんだ、お前!」
「食事に来たんだ。常連なのに、このお店無くなってもいいの?」
「はあ?」
「なに、言ってるんだ、お前」
「俺たちが使ってやっているだろ!」
ニカが今度は反対に首を傾げて続ける。
「商売したことある?」
「あるわけないだろ!」
「俺たちは冒険者なんだよ」
「強いんだ、分かってんのか?」
「一日、生活していくのに千、それを稼ぐために仕入れを抜いて家族四人として、四千。最低でもそれだけ、注文した? 常連だし、お店潰したくないんだよね?」
「はあ」
「なんなんだよ」
「俺たち、こうやって食べてるだろ」
ニカは片眉を上げる。
「え?強くて稼いでいる冒険者なのに、お昼に千掛けられないなんて、口だけ?」
完全に喧嘩を売ると、勿論相手が先に手を出す。
「逃げんなよ!」
「後悔するなよ」
「先に手を出したのはそっちだからね」
「強がっていられるのも、」
ニカが待ってましたとばかりに、団子状の物を投げた。
あっという間に、三人が無力化された。




