80.迷子は
「アーク!」
「ね、ねえちゃん・・・」
エプロンを付けた少女が慌てて走って来て迷子の少年の名前を呼んだ。どうやら姉が迎えに来たようだ。姉から顔を背けるようにして、慌てて袖でこする。
「帰るよ」
「やだ!」
「迷子になって泣いてたんじゃないの?すみません。弟が」
姉が周りにいたニカ、マルク、ポンドに頭を下げる。ニカが代表して問い掛ける。
「いえいえ。調理系の仕事をされているんですか?」
「はい。母が食堂を」
「そうですか。お昼時は忙しいでしょう?」
「え、ええ」
コーリアは答え難そうだ。ニカはフレーズとテレーズが心配そうに店から見ている様子を視界の端に収めて、自己紹介をする。
「私はニカです。そこのフレーズの雑貨店のお孫さんのテレーズと結婚しています。こちらがテレーズの弟のポンドと、私の弟のマルクです」
「あ、私、食堂を手伝っています。コーリアです。弟のアークです」
「帰らない!」
アークの主張は続く。ニカが屈んで促す。
「私は冒険者をしているんだ。食堂へ送りがてら、冒険者について私から聞くのはどう?」
「俺も冒険に連れてってくれるのか!?」
目を輝かせて聞いてくるアークへニカが淡々と返す。
「保護者の意志によるね」
「なんだよ、それ!」
「君はまだ成人していない。それはいい?」
「分かってる!」
「じゃあ、成人前の子供が何かをするためには何が必要かは知っている?」
「知らねえよ」
「アーク!!」
はらはらしながら見守っていたコーリアが思わず、叱りつける。ぱっと駆けだそうとするアークの腕をニカが素早く掴む。
「冒険者はいかなる時も冷静さを忘れちゃいけないんだ。それで、慌てない」
「離せよ!!」
「すみません。アーク、いい加減にしなさい!!」
「まあまあ。あんまり遅くなるとお母さんも心配するだろうから、移動しながら話そうか」
「本当に、すみません」
コーリアが頭を下げる。ニカは店へ振り返ると、声を掛けた。
「フレーズさん、こちらの二人を送っていきます。テレーズとポンドとお土産話を聞きつつ待っていて下さい。マルクは付いて来てくれる?」
「分かった」
ニカはマルクが付いて来てくれるのを確認し、コーリアに食堂まで案内してもらうことにする。




