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76.劇中

 マロウは演劇を思い出していた。終わってみれば、笑う余裕すらある。気持ちがすっきりとするものだった。全てを燃やしてしまうのも供養となって良かっただろうと思うのだ。

 マロウが演技をするのはいいが、死んだ後を検分されるのを避けるために、自分もろとも心残りを燃やしてしまうという計画になった。

 下手に小細工をしない方がいいということで、実家に戻ろうとしたマロウが刺された後、瀕死の致命傷のまま実家に転がり込み火を放つという筋書きだ。巻き込まれる人が出ないように、傷を負った後はかなり派手に叫び動き回って人を遠ざけた。後は魔法で屋敷のみを燃やしてくれるという事で頼んだ。

 実家のとっておきたい物は前日に魔法で回収済みなので、心残りは無い。これがあるから問題が起こる。元から断とうという思いだった。

 旅が終わり帰路に着いた時に顔を顰めたケイがマロウへ話し掛けた。


「おい。これからどうするんだ?」

「好きに生きるさ」

「お前、自分が巻き込んだと思っているだろ、違うからな」

「?」


 マロウは自分のことが苦手なケイが話し掛けてきたことに驚きつつ、慰めようとしているかの言葉に首を傾げる。


「お前、自立できるまで家から出れないぞ」

「はは。私はもう、自立しているさ」

「それはどうかな? その判断をするのはお前じゃない。ヒイさんだ」

「それは、それは」


 マロウは笑って真剣に捉えていないことに、ケイは言う事は言ったと、首を竦めて立ち去った。


「あ、マロウさん。これから何をしたいのか決まりました?」


 入れ替わりにヒイがマロウへ声を掛ける。


「好きにやらせて貰おうと思っている」

「それは、いいですね。具体的に何を?」

「いや、それはこれから」

「そうですか。決まったら、教えて下さいね」

「ああ。忝い?」


 マロウは疑問形ながらも威圧が含まれているような不思議な問いに首を傾げる。


「いえいえ。では、暫くはトオさんのお弁当作りの手伝いをお願いしますね」

「ん?それは」

「え?他にやりたい事、決まってました?」


 ヒイは全てを分かっているような顔で尋ねる。


「それは、まだ決まっておらぬな・・・」

「では、お願いしますね。今日は、家に泊まって下さい。近く、マロウさん用の家も建てますので」

「そ、それは」

「未婚の男女が一つの家にいるのは良くないですよね」


 ヒイはマロウが異議を唱える前に当然のことのように聞く。


「そ、そうであろう」

「家の希望があったら言って下さいね。旅の間は色々、説明とか助かりました。ありがとうございます。よく、休んで下さいね」


 マロウの言葉を挟む隙は無い。一切、無い。


「あ、ああ」

「・・・だから、言っただろう?」


 佇むマロウにケイは聞こえるか聞こえないかの言葉を発した。若干の情けだった。

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