73.巻き
「ふむ。厄介事に巻き込んでしまいますが、よろしいか?」
「もう、巻き込まれてるよ!」
ケイが人数分のお茶を持たされて戻ってくるなり、叫ぶ。トオが気をきかせて、ケイを戻してくれたらしい。もうケイも巻き込まれていて、知らなかった振りは出来なかったのだ。本人は分かっていても、素直になれないお年頃なので仕方がない。
「違いない。では、改めて。怪我を治し、尚且つ匿って頂き有難う存じます」
この国では見ないが、綺麗な作法のお礼だった。マロウの国では最上級の感謝を込めた礼の作法だ。
「いえいえ。ご無事でよかったです」
穏やかに礼を受け取り、返しているヒイにじれったくなったケイが口を開く。
「巻き込んだって、あんたが、偽名を使ってたのと関係あるのかよ?」
「ケイさん。最初から、喧嘩腰は良くないよ」
「ふん。いつもこんなだ」
ヒイにやんわり言われ、慌ててそっぽを向くケイ。そこへ、ニカが出た。
「まあ。二人とも。それで、マロウさんはこちらにいることをどなたかに伝えなくても大丈夫ですか?」
「味方はおりませんので、お構いなく」
「味方なら、ここにいるだろ!!」
何でもないことのように表現される言葉に、ケイが強い足踏みと共に答える。
「おや。それは、幸い」
マロウが少しほっとしたような気が抜けた顔で微笑んだ。
「率直に申し上げますと、お家騒動に巻き込まれたのです」
「はあ?あんたは、それでどうしたいんだよ」
ケイが理解できないことはすっ飛ばし、単刀直入に聞いた。
「私?」
「ああ。俺は『おいえそうどう』ってのが、どういうもんなのかよく知らないけど、それが起こっているのはどうしようもないし、ならあんたがどうしたいかだろう? それが分かんなきゃ、俺たちは協力できない」
「私が、どうしたいか。確かに、そうだ。私は、どうしたいんだろう?どうしたかったんだろうか?」
思考の底に沈んでしまうようなマロウに、ヒイが声を掛ける。
「マロウさん。今日は安全な所でお休みになって、お腹いっぱいになってからゆっくり考えて下さい」
「美味しいものでお腹がいっぱいなら、いい考えが浮かぶよ!」
ミハがここぞとばかりに食事の美味しさを売り込む。未来のお弁当のお客様になってくれるかもしれないのだ。それに、自分が言えるのはきっとこれくらいだろうしと、笑う。
「かたじけない」




