7.四人で街をぶらつきます
包丁以外の刃物がこれほど並んでいることも、手に取れる金属の防具も初めて見る物ばかりだった。
「買いません」
「お姉ちゃーん」
「ヒイちゃーん」
「買いません。自分でお金を稼いでからにして下さい」
「尤もだな」
いきなり野太い声がした。がっちりムキムキのお爺さんに近そうなおじさんだ。どうやらこの店の人間らしい。
「すみません。今日は見るだけで、お金ができたら買いに来ます」
「堅実なのはいいことだ」
ヒイが騒がしくしたことを詫びつつ、ニカとミハに釘をさす。冷やかしのヒイ達に気を悪くすることなく、「金ができたら来いよー」と声をかけてくれ、見送ってくれた。流石に、今日は買って貰えないことを察して、二人ともすっかり静かになっていた。
そんな二人を引き連れ、他にも見たことがない魔道具の店や、食料品、雑貨など生活に必要な店を回り、どんどん常識を頭に詰め込んでいく。ヒイだけが、生き生きした目で興味の対象を見つめ、今日は何も買い物をしないと理解して、はしゃぐ気持ちも沈下した二人は付いて行くのみだ。
「残念・・・」
「仕方がないよ。ヒイちゃんは堅実派だからね」
「うーん・・・」
すっかり意気消沈したニカとミハを見て、ヒイが苦笑しつつ近づいてきた。
「もう、二人とも、お菓子くらいは買って帰ろう?」
「やったー!!」
「そうこなくっちゃ!」
「現金だねー。まあ、はい。おやつは一人、五百円までです」
「遠足だー」
「相場はそんなもの?」
「うん。単位は違うけどそんなに変わらないよ。街の分、食料品がちょっと高めかな」
「お姉ちゃん、私、これ」
「五百ピッタリだね。こういう店舗では値切ったりは、ないみたい。ニイちゃんも決まった?」
「うん」
「二人とも、ピッタリって凄いね。お釣りを次回にとっておこうとかないか。ないよね。あれば、あるだけ使うもんね」
「失礼な。最低限は残すよ」
「だって、五百いいんでしょう?」
二人の割り当て、いっぱい、いっぱいの買い物に若干呆れながら、三人分のお菓子を買う。ちなみに、ヒイの分はお釣りが出た。アキの分は起きた時にと考えていると、ニカがアキを背負うのを変わってくれるというので交代する。
今日の買い物と街の観察はこれで終了したので、門を出て森の家に向かう。
「早速食べてるし」
「甘、くない?」
「そうなの?お砂糖は高価なのかな?」
ミハが買った自分の分のお菓子に早速手を付けているが、海外のお菓子のイメージで食べたためか思ったより甘さ控えめだったようで、がっかりしつつヒイとニカに分けてくれる。
「素朴系だ」
「家に帰ったら蜂蜜出そうか?」
「それがいい!」
「筆も用意しないとね」
「墨もね」