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64.目的は

 ヒイは二階に上がると、少女の視界も自分に押し付けるようにして塞ぎ、書き方教室を行っている部屋を足早に通り過ぎる。


「ヒイさん」

「ケインさん、ご協力お願いします。エルディランドゥさんの捕まえている人の処遇も合わせて」

「気絶させてある」


 エルディランドゥはそう言い、痩せて地味な格好をした男の襟首を掴んで差し出す。ケインは目を白黒させ、何事かを理解しようと視線を彷徨わせる。

 ヒイが目と口を押えていた体を離し、少女に話しかける。


「私はヒイ。この方は冒険者ギルドの偉い人のケインさん。こちらは妹の夫のエルディランドゥさん。あなたは?」

「・・・」


 少女は泣かないようにするので精一杯だ。


「ヒイさん。これは?」

「この二人は商業ギルドから来たようですよ」

「え?」

「・・・」


 ケインが視線を向けるが、涙を溜めた少女はだんまりだ。


「私が予測するに、多分鑑定を使える彼女が商業ギルドに有用な者を、気絶している指示役から言われて探していたんでしょう」

「そ、そんなことが・・・。でも、鑑定とはこれまた貴重な力の持ち主をそんなことに!」


 ケインの言葉に少女がビクッと反応する。


「然るべき措置を取れますか?無理なようでしたら魔女の店に相談しに行こうかと」

「待って下さい!!やります。ええ。魔女のお店へは勘弁下さい」


 ケインがヒイに最後まで言わせなかった。

 少女がハッとして思わず


「・・・わたし、捕まるの?」

「ううん。あなたは知らされて無かったの。良いことも、やってはいけないことも教えて貰えなかったり、逆を教えられたりしていたの。あなたは賢く、よく見えていた。何かが違うということは薄々気が付いていたでしょう?」

「うん。あの、おじさんたちは嘘ばっかり。嫌い。でも・・・」


 きっと、少女が離れようとする度に情に訴えたり、暴力を振るわれたり、脅しもあっただろう。そんな中、自分を守りつつよく頑張った。それだけで賞賛に値する。だからヒイは聞いた。


「そう。あなたはどうしたい?商業ギルドから離れたかったら、力になるよ。そのままが良いんだったら、そうするよ。難しいかな? 何が好き? 何が嫌い?」


 ヒイが少女の幼い年齢に思い当たり、聞き方を変える。少女はじっと黙って考え、口を開いた。


「・・・もう、痛いのも嘘もやだ」

「よし。じゃあ、家に来る? 友達もできるし、生きていく方法も一緒に探していこう。同じ年くらいの子達もいるし。一緒に学んでいこう」

「教えてくれる?わたし、聞きたいの」


 少女は好きなことを教えてくれた。ヒイが力いっぱい請け負う。


「いいよ。聞きたいこと沢山、聞いて。ケインさん、それでいいですよね?」

「は、はい。あの、ヒイさんは・・・。いえ。なんでもありません。この子はヒイさんの家に行くということで。エルディランドゥさんが捕まえた者は、冒険者ギルドで協議します」


 ケインはヒイの能力に言及しようとしたが、止めた。知らない方がお互いのためになり、守ることにもなる。


「お願いします」

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