56.遠ざける
「なあ、なんでこんなに人がいるんだ?」
「びっくりだね」
「そうは見えないけどな」
ケイが書き方教室の大盛況の驚きをヒイに伝えるが、表情は冴えない。
「ケイさん。今日はズウゾさんの所にお使いに行ってきてくれる?」
「ああ?いいけど。この人数、大丈夫なのか?」
「クロ君もいるから平気だよ」
しっかりとくっついているクロを目の前で掲げて見せる。
「じゃぁ行ってくる。作れるか聞いて、材料とかも確認してくればいいんだな?」
「そう。お願いね。帰りはそのままフランさん達と帰ってね」
「分かった」
ケイは一つ頷き、軽く走ってズウゾの鍛冶場に向かう。
ズウゾの鍛冶場に到着するなり、付けて貰った看破の分析能力に驚く。勿論、規格外の能力と分析結果の両方にだ。
「まじか。分析、終わんねぇし。結果もやばいし」
「あ、ケイー!どうしたの?お姉ちゃんは?」
「お使い頼まれた。一人で大丈夫だってよ」
「そうなの?何か作りたいものできたのかな?」
フランの鍛冶場への送迎と、手伝いをしつつ、外で鍛錬をしていたエルディランドゥがケイに気付き、鍛冶場の中で魔法を使い空調を調整していたミハが出てきて声を掛ける。
ケイは分析結果を視界の隅へ押しやるように頭を振ると、ミハに答える。
「皮むき器とスライサー、抜型もだってよ」
「それは必要だね。フランもそろそろ刃が付いたものに挑戦しようかって、ズウゾさんと言っていたし」
「それでか」
納得したケイにミハが疑問をぶつける。
「さっき、顔色悪くなってたけど、どうしたの?」
「え?あー。うーんとな」
「うん」
答え難そうなケイに気付かず、ミハが先を促す。
「鍛冶場、凄いだろう?」
「凄い」
エルディランドゥが一言で終わらせた。ミハが良く分かっていない様子に、更に言葉を重ねる。
「本当に色々、凄いんだ」
「んん?そうなの?精霊がいっぱい住んでいるっていうのは聞いたけど」
「見たことない」
解析した結果も含めてだがケイが極力平坦に言う。本当は力いっぱい、叫びたい所だがそうした所で伝わらない事は分かっている。
「へー。お姉ちゃんのことだから、外見はこの街にある普通の形にしたと思ったんだけど・・・」
「外見はな」
ケイとエルディランドゥが同意する。
「ケイは見えるから尚更だろう」
「まあね」
「でも、凄い方が、色々な物ができていいんじゃない?」
「そうだろうな」
「そうかもな」
ミハの言葉に二人が若干遠い目をし、またもや同意した。




