53.足りないって
「お姉ちゃん。お家、足りなくなりそう」
アキが新しくできた鍛冶場を見て、すぐにヒイに言った。
「え?」
「みんな、見てたら住みたくなったって。お家、増やせる?」
「どんなお家がいいのかな?」
アキの言葉に精霊たちが詰めかけているらしいと聞いて、ヒイが焦る。鍛冶場の中の一点を差してアキが口を開いた。
「この丸い所にみんな住みたいって」
「炉、大きくできるかな・・・?もしくは所々、素材を変える?」
ヒイが思いつきを口にしながら考え込むと同時に、慌てて鑑定で周囲を見る。精霊は見えない。頭を抱えたくなるところを堪え、トオに聞く。
「トオさん。どちらがいいですかね?」
眩しそうに目を細めたトオが答える。
「りょうほうがよさそうです」
「え?そんなに!よし、皆また少し離れて、離れて」
早速、使い始めようとしていたズウゾと、中をしげしげと見ていたキキラーティカにまた外に出て貰う。
「なんだぁ?」
「なんだい?」
「ちょっと、修正です」
「何を直すって言うんだ?」
皮肉屋で見る目が厳しい者でさえ、非の打ちどころがない鍛冶場に見えたズウゾが思わず聞いていた。
「炉を大きくして、素材を増やします」
「何でまた?」
「ズウゾさんのご希望です」
「あん?精霊か・・・。そりゃ、仕方がないわ」
流石のズウゾも精霊の奔放な自由さと力を分かっていたようで、大人しく下がる。
「今度は、どう?」
ズウゾではなく、アキにお伺いを立てるヒイ。
「うーん。多分、大丈夫。しばらくは出たり入ったりするって、ここだけ?うん。分かった。・・・あ、本当? ずーっといてくれる?ありがとう!」
「ええっと、炉は三倍の大きさになってます。これ以上大きくすると、通常の方法で全体の温度を上げることが難しくなるので」
「確かにな。この構造だとこれ以上の大きさは通常の燃料じゃ無理だな」
ホッとしたヒイがズウゾに結果を告げ、鍛冶場を引き渡す。アキからは暫く出入りするものもいるが、定住してくれるものもいると伝えられる。
「燃料と金属各種揃えましたので、できれば調理器具から作って頂けると嬉しいです」
「ああ?」
「習わせていただく子はフライパンとかを作りたいそうなので」
「・・・本人の希望なんだな。考えとく」
勿体無いとでも言うようなズウゾの言葉にキキラーティカが反応し、ニカへ言葉をかける。
「あたしたちは対価を間違えたりしない。あんたには、私の技術を教えるよ。武器はもう癖がついちまっているからね。自分に合うものを作ってもらいな。そうだろ?」
ズウゾもはっとしたように続く。
「当ったり前だ。フライパンだろうが、鍋だろうが何だって作って、教えてやる。・・・武器もな」
「「「ありがとうございます」」」
ヒイ、ニカ、ミハの声が重なる。
「礼を言うのはこっちの方だ。身体、楽になった。感謝するぜ。ありがとな」
「いえ。こちらこそ。これから、よろしくお願いします」




