35.急成長
「ひゃ~~~!!」
早朝、ヒイの驚嘆の声が響く。全員がヒイの元に駆け付けた、と言っても結婚前のニカとトオに連れられたアキだけだったが。
「ヒイちゃん!」
「あ、ニ、ニイちゃん!」
「どうし・・・た・・のって、それ・・・?」
ニカがヒイの悲鳴というよりも驚きを多く含んだ声をあげさせた正体に、視線を止めた。
「うん。クロ君が一気に大きくなっててビックリしたの。ごめんね。驚かせて」
ヒイのベッドには一緒に寝ていたであろうクロが立派な黒狼、後足で立てば軽く2メートルは超えるくらいの体長になって寝そべっていた。
「いや、別に理由が分かったんならいいけど、なんで大きくなったの?っていうか成長した?」
「そうみたいなの。大きさが変わったというより、成体になったって感じだよね」
ヒイとニカ揃ってトオを見る。トオは当然のように言う。
「ええ。りっぱにそだちきりましたね」
そう、全員の進路が実は決まっていた。クロも例外ではなかったのだ。トオが語ったところによると、黒狼は唯一の相手と添い遂げる種族らしく、お互いの気持ちが通じ合うと急成長し番うことが可能となるとのことだった。
ヒイは真っ赤になり、声にならない悲鳴をあげた。
「ええっと・・・。どうぞ、ごゆっくり?」
ニカがなんと言葉を掛けていいものやらと迷い、口にした言葉に即座にヒイから返答が戻ってくる。
「いや。朝だし、起きてお弁当の準備するよ!」
「そう?じゃあ、私も着替えてくるわ。トオさんもアキちゃんもそうするでしょ?」
「はい」
「うん。お姉ちゃん、おはよ。おめでと!」
分かっていないようで、分かっていたのかアキの言葉に、ヒイがベッドに戻るように倒れ、クロは泰然と尻尾だけでぱたりと答えた。
遠くでもう一度悲鳴のような声が聞こえた気がしたが、誰もが気にせず朝食と弁当の作成にとりかかろうとした時だった。全員が揃った食堂に入ってきたヒイとクロの二人に、全員が声を揃えた。
「「「「「「ええー!!」」」」」」
全員の驚きかとは思ったが、トオとアキは冷静だった。
「おとなになれば、へんげできます」
「クロくん、大人?」
「そうですよ」
いつもより少し顔を赤くしたヒイに絡みついている、長身でしなやかな筋肉がついた黒目黒髪の美丈夫がいた。
「ク、クロ君なんだよね?」
「ヒイちゃんと一緒に入ってきたしね」
ミハが確認し、ニカが返す。先ほどの大きな黒狼も幻だったのかと疑うほどだ。
「あれがクロか」
「クロは子犬だったでしょう?」
「狼って最初言ってたぞ。でも、こんなに一気に大きくなるもんか?」
ケイが驚き、フランが首を傾げ、マルクが同意している。エルディランドゥは驚いてはいるが、クロの体捌きに感心していた。




