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27.もう、仲良し

「おはようございます」

「おはようございます。エルディランドゥさん。早速ですが、ミハと一緒に移動して下さい。ミハも私と遜色なく指導できますので」


 朝に冒険者ギルドで礼儀正しく挨拶するなり、ヒイから場所の移動を告げられる。


「分かりました。よろしくお願いします。ミハさん」

「は、はい。こ、ここちらです」


 ミハに連れられて行ったエルディランドゥは、街から出て、家で練習すると説明を受けている頃だろう。迷宮に弁当を売りに行くとは言ってあるので、街の外に出ることは問題ないだろう。信頼できる人なので、後はミハが上手く言って家に連れて行く。そうすればもう身内も同然だ。

 ミハには錬金術を駆使して作ったお守りを渡してあるので、街から家の移動は問題ない。だが、弁当を売っている時に絡まれないための抑止力として、エルディランドゥは是非とも引き入れたい人物だった。騎士という制服からも証明されている正式な身分と、しっかり強そうに見える外見は、強そうには見えない集団を守るためには必要だ。これはお金では買えない盾であり、商業ギルドの横暴を止める鎖でもある。そんなとても有り難い存在がエルディランドゥである。

 ヒイはミハの思いもあるが、優秀な人材を逃がすつもりはない。勿論、どうしてもエルディランドゥが騎士を続けたいのならば、他の方法を考えるまでである。



「どこへ向かっているんだ?」


 敬語は抜きでと伝えてあるエルディランドゥがミハに尋ねている。


「家です」

「家?」

「そう。ニイちゃん達がお弁当を作成中の家ですよ」

「そうなのか。ではそこへ行って、お弁当?というお昼を売るのか?」

「はい。それに付き合って下さい」

「了解した」


 二人はてくてくとさくさくと進む。ふとエルディランドゥが何かに気が付いたように問い掛けた。


「何か、襲われないような工夫をしているか?」

「気が付いちゃいました? お姉ちゃんがそういう道具を作ってくれました」

「凄いな。そうした技術もお持ちなのか」


 感心しかない様子のエルディランドゥにミハも笑って答える。


「お姉ちゃんは働きますからねー。心配性だし」

「仲がいいんだな」

「みんな仲良しですよ」

「それはいい」

「エルディランドゥさんは?」

「俺は・・・あまり」


 エルディランドゥが言い辛いことがあるのか、言葉を濁す。騎士はある程度、余裕のある家の子がなるものだと想像しがちだからだろうか。冒険者ギルドで見ていても、文字が書けない読めないというのは地方から出稼ぎに来ている人や、子供も労働力として考えられる家の人が多い。ミハは文字が上手く書けなくても騎士ができる程の力を持っているということが、そうした何か言葉にし辛いことを生んでいるのだろうと推測しつつ口を開いた。


「ちょっと寂しいですね。でも、家に来たならもう仲良しですよ!」

「そうなのか?」

「ええ。ご飯も一緒に食べたら、もう、すっかり仲良しです。この前も美味しいって食べてくれたでしょう?」

「ああ。あれは、本当に美味かった」

「あんなに美味しそうに一緒に食べてくれて、とっても嬉しかったです」


 実は、昨日一日中書く練習している間に、お昼のお裾分けをしていたのだ。エルディランドゥの食べっぷりは作った方が嬉しくなるくらい、気持ちの良いものだった。

 二人が昨日の昼食を思い出して微笑みあっていると、家に着いた。


「こちらになりまーす」

「お邪魔する」

「お帰り、ミハ」


 ニカがひょっこり顔を出す。


「ただいま、ニイちゃん。トオさん、アキちゃん。ケイ、マルク、フラン、ポンド」


 家に残っている全員に声を掛けるが、子供たちは真剣な顔でトオの手さばきに見入っている。


「トオさん。何やっても上手いねー」

「本当だね」


 料理はできるが、口に入れば同じという大雑把なニカは早速お役御免になったようで、見学者と化している。ミハは感心しきりだ。昨日、ヒイに習ったばかりのトオの料理の腕は、今、家にいる者の中で一番だった。エルディランドゥも思わず同意する。


「見事だな」

「あ、ニイちゃん。私達は食卓で文字の練習しておくから。お弁当出来たら、教えて。一緒に出発するよ」

「うん。そうさせてもらう。エルディランドゥさん?ニカです。昼にはよろしく」

「エルディランドゥだ。こちらこそ、よろしく頼む」

「はいはい。こちらに、どうぞー」


 ミハがエルディランドゥの背中を押して、台所から移動してく。ニカはミハの分かり易い様子に、軽く苦笑して料理の監督へ戻っていった。

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