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25.見守る

「お姉ちゃん。凄い人だね」

「ミハちゃんは初めて見るもんね。かなりの人が銀色になっているから、噂が広まっているみたい」

「うんうん。いい感じー」


 ヒイとミハが午前の個別指導の人を待っていると、騎士服を着た体格の良い男性が近づいてきた。


「予約した、エルディランドゥだ」

「はい。お待ちしておりました。ええっと、冒険者身分証明書はお持ちですか?」

「ああ、この服か。騎士団に所属しているが、休みの日は冒険者として働いている」

「分かりました。まず、私が見本を書かせて頂いて、カードを銀色にする方法と、ひたすら練習して頂く方法がありますが、どうされますか?念のため、一万をお持ちかどうか見せて下さい」


 書く名前を知られたくないという人もいるので、こういう言い回しも付け加える事にしたのだ。だが、未だ銀色にしてみせる事を断って来た人はいない。無料かどうかは確認された事はある。最終的に銀色で終わったのなら一万を貰うが、途中何度でも銀色に変える事は無料だというと誰もが興味深そうにする。


「見本を書いてくれないか」


 エルディランドゥに即座に答えられ、ヒイは片側を押さえて貰いながら名前を書く。いつも通りにぱっと銀色に変わる。


「本当に変わるのか。いや、信じていなかった訳ではないのだが、自分でどんなに頑張ってみても木の色から変わらなかったものだから・・・」


 恥ずかしそうに告げ、一万を見せてくれるエルディランドゥに長期戦を覚悟したヒイは、ミハに託そうと考え始める。


「エルディランドゥさん。普段は文字を書かれますか?」

「ああ。書くが・・・、書かない方がいいと言われ、取り上げられるな」


 気まずい雰囲気が流れるが、ヒイはどんどん進む。ミハは二人の顔を交互に見ながら、はらはらしている。


「そうでしたか。まずはこの筆記具に慣れて下さい。持ち方はこうです。最初は縦、次は横。そう、そうです。四角の中に納まるように、なるべく真っ直ぐに」

「まっすぐ・・・まっすぐ・・・」


 エルディランドゥはヒイの言葉を繰り返しながら練習に励むが、線がへろへろだ。


「もう少し力を入れても大丈夫ですよ。万が一、壊してしまってもすぐ直りますから。お代も頂きません」

「そ、そうか。それなら」


 コツを掴んだのか、段々線が真っ直ぐになってく。次は斜め、丸は無いので次は全体のバランスだ。


「今度は、これをなぞって下さい。納得のいくまで練習して頂いて、時折カードに書いてみるといいかもしれません。お代を頂ければ、最後に私が名前を書いて銀色のカードにはできますので」

「そうか、1万を支払えば銀色は確定なのか」

「ええ」

「それならば、何度でも挑戦しよう。粘り強さには定評がある」

「午後からは私は集団指導に移らせて頂きますが、妹を付けますので。ミハちゃんご挨拶を」

「ミハです。よろしくお願いします」


 ミハが消え入りそうな声で挨拶する。ヒイは微笑まし気に見守っている。エルディランドゥはミハの好みのど真ん中だ。きりっとした男らしさを備えながら、笑うと可愛い顔と、鍛えられた身体、更に努力家で、どんな相手にも丁寧に接している。勿論、鑑定で未婚で好きな人や、付き合っている人はいないと出ている。ヒイはこちらの結婚制度も学んでおかないとと考えつつ集団指導へ移動する。


「こちらこそ、よろしく頼む」

「・・・はい」


 めっきり大人しくなってしまったミハに、初対面のエルディランドゥが気づくはずもなく。黙々と練習が続く。ミハも書く方以上に真剣だ。


 ヒイが午後の集団指導を終えて戻ってきても、二人はまだ書き続けていた。流石、騎士で休みの日も休まずに冒険者の仕事をするだけのことはある、素晴らしい体力と集中力だった。


「やったー!!!」


 ミハの歓声が響く。


「おお・・・」


 エルディランドゥの感嘆の声も続く。とうとう、書き方教室内で金色が出たようだ。


「ありがとう。感謝する」

「いえ。素晴らしい練習量と、諦めない姿勢でした」

「照れるな。そんな風に褒められることなんて無かったから」

「お姉ちゃんの褒めは効きますよ」


 エルディランドゥが照れ、ミハも照れていたはずが、同感だとでも言うようにコメントしている。


「そうだな。あなたのお姉さんは素晴らしいな」

「ウー!」


 最近は、ヒイといつも一緒のクロが威嚇する。


「ああ。すまない。純粋に賞賛だ」

「クロくん。心配ないよ。お姉ちゃんはクロくんにだけは特別だから」

「ク~?」


 「そうなの?」とでも言うようにクロがミハを見上げ、頷きを返される。


「二人とも。エルディランドゥさんの頑張りを称えて」

「ご苦労様でした」

「クー」

「こちらこそ、一日付き合って頂いて、どうもありがとう。それでは、失礼する」


 颯爽と去っていったエルディランドゥを見送ると、名残惜しそうにしているミハを横目に片付け今日の仕事を終えた。


「また、何かで会えるといいね」

「うん」

「ミハちゃん、明日は何を食べたい?」

「・・・えー。迷う。シチューかな。今日はニイちゃん達が作ってくれているんだよね?明日は、シチューが食べたい」

「じゃあ、そうしよう。帰ろっか」

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