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2.四人で転移した

 目を開けたら、明るかった。空気の匂いはちょっと湿っぽい森と土の匂い。さっきは匂いが無かったのだと、嗅ぎ取ってから気が付いた。


「にいちゃん。みんな、いる!?」

「いるよ。皆」


 三春の問い掛けに、ほっとしたように周りを見回した二夏の声が返る。


「何、なに?どうしたの?」


 暢気な一冬の疑問が挟まる。


「いやいや、ひいちゃん。見て、周り!」

「え?うん。森だね。これは知らないとか付けた方がいい?」

「ベタだね。あきちゃんは寝てるの?」

「そうみたい」


 一冬はしっかり、秋四を抱きしめている。のんびりとした口調に反して、かなり警戒しているようで、表情は硬い。


「余裕なのっ!?」


 三春はそんな一冬に気付かず、地団駄を踏む。


「ひいちゃん、我々は、異世界転移した。戻れない。色々、神と名乗る者から分捕った。以上」

「了ー解」

「にいちゃん、男になってる!!」


 いきなり、話が飛ぶ三春に、軽く二夏が答える。


「え?気が付いた?いいでしょ?それに、兄ちゃんは基本、男だよね」

「ああ、性別変えたの?」


 遠くを見据えながら、一冬がなんでもないことのように言う。


「ちょちょちょ、ひいちゃん、人は性別を変えられません!」

「人、卒業しました」

「おめでとう。あ、これか。ほうほう」


 視線を二夏と三春に戻した、一冬が一人頷くと、待ってましたとばかりに三春が飛びつく。


「なに、おねえちゃん。説明して」

「うん。その前に、ちょっと失礼して。あきちゃんの安全から」

「え、何とかなりそう?」

「するよ。まず、これか。みんなに見せて、で、ここよ」


 心配そうに問いかける二夏に、一冬が透明な板を空中に浮かべて見せる。


「おお。ゲームでよく見る」

「そう。自己犠牲が危険だから、あきちゃんが成長するまでは不使用にしておくね。これ、固定されてて外せないみたいなんだよね」


 二夏の言葉に、一冬は頷きながら、単語を掴むように扱うと、透明な黒い板の上に載っていた白い言葉は灰色になった。その後、完全防御、健康、幸運という白い文字達が追加されていく。そんな様子に待ちきれず、三春が割り込む。


「どうするの?どうやるの?」

「ゲームと一緒だよ」

「えー。お姉ちゃんがやって」

「もう、そこで無精する」


 三春は二夏が代わって抱いている四春が寝ているので、完全末っ子モードだ。そんな様子に、仕方がないなと一冬が応えているのに、二夏が突っ込む。


「いや、そこで甘やかしてる」

「まあ、みんなで、やる方がいいでしょう。この世界の常識を学ぶ必要もあるし、今後どうするかも考えよう」

「そうだね」

「うん。うん、お姉ちゃん、私、魔法使いになる。それ系付けて」

「はいはい。基本的に、四つ付けられるから。まず、基礎魔法をつけて、魔力回復、魔力増大で攻撃反射ね」


 一冬に魔法が使えるような単語を説明してもらいながらつけてもらう三春に対し、二夏は自分の構成を考える。


「私?私でいいか。私も魔法剣士系にしよう。二刀流の」

「好きだねー」

「うん」

「あ、そうだ。性別、性別。にいちゃん、何で?」


 思い出したように三春が聞く。


「いや、酷く男尊女卑の所だったら危ないと思って」

「それは、建前で、ゲームの時はほぼ男性キャラでしょ」


 すかさず、一冬の言葉が続く。


「正解!」

「感心して、損した!!」

「まあ。色々、考えた方がいいし、好きに選べるんでしょう?」

「どっちにもなれる、種族にしてもらったんだ。いえーい!」


 三春が二夏のはしゃぎように半眼になるが、いつでも男女が選べるならいいかと思い直した。


「さて、種族は妖種ね。人型で性別は選択可能で、外見もある程度変えられると。で、魔法双剣士ね。じゃあ、二刀流に基礎魔法、攻撃強化に攻撃反射で、どう?」

「いいね。で、ひいちゃんは何が付いているの?」


 二夏は最後にねじ込んだ条件だから、あまり人からかけ離れた種族にはなれなかったんだと笑っている。だが、性別を選べるなんて色々な場面で助かる能力だ。


「私は鑑定、完全防御、家内安全、金運上昇だよ」

「家内安全は何?家だけ?」

「いや、自分が認識している家族と家の中が範囲だね」

「流石。みは、危ないから水か土からにして」


 二夏は魔法を試したくて仕方がない三春が、危ないことをする前に釘を刺す。


「はーい」

「ちょっと目を離した隙に」

「楽しそうだからいいじゃない。でも、にいちゃんありがとう」


 一冬は水芸のように楽しそうに魔法を使う三春を見たまま、言う。


「こちらこそ」


 二夏も三春の楽しげに土人形を作る様を見たまま、答える。いきなり、異世界転移と言われて納得できる訳でも、承諾できる訳でも無いが、覚悟を決めるように二人は前を、二人の妹を見据えていた。


「あと、名前だけど本名とか漢字とかは避けた方が良さそう」


 気持ちを何とか切り替えたような一冬の言葉に、二夏も続ける。


「ふうん。そこもいじれるの?」

「大丈夫」

「じゃあ、やっちゃって」

「あきちゃんはアキで、三春はミハで、にいちゃんはどうする?」

「ニカで」

「ほいっと。私はヒイで。それで定番の冒険者で稼ぐの?」

「そうなるだろうね。まずは家を何処かに建てて、町を見に行って、常識を学んでから稼ぐ。だけど、暫く自給自足できそう?」

「多分、大丈夫。とりあえず、四人いれば何とかなるでしょう。やってみよ」

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