198.つるぴか
「次は、お母さんの・・・」
「羊を作ってみたの」
言い淀んだ事に気が付いたのか、ムウが発表し、ヒイが力を注ぐ。
「分かった」
ムウの手の中の塊は一切動かず、その隣に白から灰色のグラデーションの雲で出来たような羊かもしれない動物がいた。鳴いたのかもしれないが、周波数的に聞き取れないのか音が小さいのかクロの耳がぴくりと動いただけだった。
「わあ。この子は『もこ』ね」
粘土で作った物を机に置き、ムウは境界線が曖昧な雲のような羊を掌に掬い上げる。
「続いてニイちゃんね」
「犬にしてみたんだ」
ニカの自己申告は早かった。ヒイが頷く。
「名前は『シャラ』にするんだ」
ニカもムウと同様に粘土を一旦置き、出現したサラサラよりもシャラリと金属的な音がしそうな毛足の長く厚みの無い動物を手に載せた。
「お姉ちゃん、アキも」
「ヨツも」
「二人とも出来たんだね」
ヒイはもう何かは聞かなかった。ちょっと、想像もつかなかったので。
「つるー」
「ピカー」
つるりとしたゼリーのような透明度の高い宇宙人?と眩く光る火星人?が産まれたようだ。ピカはどこから?
「お父さん・・・」
ミハががっかりした様子を隠しもせずに声を掛ける。
「お父さんは普通なんだよ」
「お父さんのは、カメレオンだね」
短時間で小さいのに細部までよく作り込まれたカメレオンだった。瞬く間に動き出す。様々に色を変えながら。ヒイがイツの手に現れた動物を見て告げ、ミハが疑問を口にしている。
「どうしてカメレオンにしたの?」
「ここは森だろう? 虫に悩むこともあるだろうと思ったんだ」
それを聞いたムウが破顔した。
「それは素敵ね」