197.ふわもこさら
ヒイは微笑みのまま顔を固めている。知っていたとはいえ、なかなかだ。ミハは結構幅広く色々出来るが、ニカは苦手なものが如実に分かる。だが、頑張っている。
「ニイちゃん、それなあに?」
「なにー?」
アキとヨツがニカの手元を覗き込んでいる。さも簡単に聞いた二人に、ヒイとミハは絶句している。色の付いた粘土で見た事も、想像したことも無いような物が形成されていく。ムウは自分の手元に集中しているが、ニカの腕前と差が無いように見える。
ミハがこそっと聞いた。
「お父さん、呼んでくる?」
「お願い」
ヒイも小声で返す。ミハがあっという間に戻って来た。
「お父さんも混ぜてくれ」
「「いいよー」」
今日は何故、志木家とトオ、クロだけなのかというと、エルディランドゥは武器の調整のため、フランの鍛冶場へ。ケイとマロウは冒険者ギルドで仕事だ。勿論、リガルも仕事に行った。ヤグロは残りたかったようだが、ルグヤに連れて行かれた。テレーズは体調が落ち着くまで、お休み中だ。クロは自分の足で駆けた方が早いので、いつも通りヒイにくっついて見守っているだけだ。トオはアキが一緒に乗ろうと誘ったので、同じく見守っている。
「お父さんはどんなのにする?」
「凄いの?」
「・・・え?」
アキとヨツの過剰なる期待に、イツがたじたじになっている間に、ニカとムウ、ミハが完成したようだ。
「お母さんと、ニイちゃんはそれで良いの? ミハちゃんのは、はいっ」
ミハが作った手のひらサイズのふわふわで七色の玉飾りのようなものが繋がった体と尻尾を持った円らな瞳の動物が、意識を持ったように動き出す。
(ふわ~)
ミハが手の上で鳴き声を上げたふわふわな動物に目を丸くする。
「鳴いたっ!」
「あ、ミハちゃんの」
「凄い。ころころしてる!」
アキとヨツが前のめりで観察している。
(ふわわ~~)
見られている事に頓着せずに、欠伸の様にもう一度鳴き、丸くなって寝てしまった。
「お姉ちゃん、この子はこのまま?」
「いや、あ、外で大きくなってもらって。皆のが決まったら一緒に外に行こう? それまで名前を考えておいたら?」
大きくなれると聞いて、早速試そうとしたミハを止め、提案する。
「うん。ふわふわだから、『ふわっ』にする」
一気に羨ましくなったのか、アキとヨツも粘土で塊を作り始める。ヒイは名前の最後に『っ』がある気がしたが、敢えて聞かなかった。