193.残念
ケイはフランからペンの説明を受けていた。
「これは、消えるの。こっちは消えないの。どっちも全部、私が作ったんだよ! ちょっと手伝って貰った所もあるけど」
「凄いな」
邪魔にならないようにしながらも、確実に邪魔になっているリガルがフランの側をうろうろして、質問したそうにしている。その前に、フランへの賞賛を惜しまない所は評価すべきだろう。
「聞けば?」
とうとう根負けしたケイがリガルに告げた。リガルは早速、その言葉に従っている。
「フラン。消えるペンとはどういうことですか?」
「あ。これ、パンで消えるんだって。勿体無いけど・・・」
「パンで?」
ひもじい時代があったフランのとても残念そうな言葉に、ケイも同様に反応する。
「でもね、ヒイさんがパンじゃない消すの作ってくれたよ」
「良かったー」
心底安堵した二人が顔を見合わせる。金属でできたペンはジョンが作っていた鉛筆よりも固くて、長く使える上に金属が多いのでフランが作るのにぴったりだった。
「これで書いた文字が消える。消えないペンは?」
「これはインク付けるの」
「ほお。付けペンですか」
知っているペンの形状が出て来て、安心したようにリガルが頷いた。
「こっちはインクはいらないよ」
「便利だな」
ケイは感心している。リガルは耳を疑った。
「え?」
「はい。ケイ、書いてみて」
「おおー」
「ええ?」
「いっぱい書けるんだって」
「そうなのか。インク無くなったらどうするんだ?」
「ええー!!!」
驚くリガルに煩そうにケイが見る。フランは簡単に聞く。
「どうしたの?」
「こ、これは、とても画期的ですよ!!!」
「ありがとうー」
ケイは理解して、理解できる自分を不憫に思った。フランはリガルの驚きを全く理解していないし、リガルは理解されていないなんて、思ってもいない。残念だ。これから自分が解説しなければいけないと思うと気が重い。誰かが通りかからないだろうかと思うが、食事が終わってこの家には住人である三人しかいない。本当に残念だ。