19.鑑定って凄い
「鑑定のお陰だけどね」
二件の仕事選びを褒められたヒイはそう言った。三人とも思っていたことだが、とても便利である。自分たちの仕事ぶりを話したニカは、ヒイの教室の様子についても聞く。
「書き方教室だけで食べていけそう?」
「難しいかも」
「そうなの?」
ミハが首を傾げる。
「ある程度興味のある人が書ききってしまえばね」
「お姉ちゃん、お弁当屋さんやれば?今日も双剣のおばあちゃんも美味しいって喜んでたよ」
「確かにね」
ニカもお弁当の可能性に同意する。
「ケイさんも驚いてたし、それもいいかも。料理するのは嫌いじゃないし。ケインさんにその辺りも聞いてみようかな」
ヒイが早くももう一つの道が見つかりそうで、ほっとしている所にミハが尋ねる。
「やっぱり、王道として携帯食は美味しくないの?」
「そうみたいだよ」
会話中に虚空を見つめて鑑定していたヒイが、携帯食の残念さを伝える。
「ヒイちゃん、頑張って。私とミハも迷宮に泊りになるかもしれないから。あ、それと安全に泊まれるテントとかぐっすり眠れる寝袋とかも欲しいな」
「ニイちゃん、そうだよね。私たち、冒険するし」
「魔道具店には無かったの?」
ニカとミハは顔を見合わせハモった。
「「ない」」
「魔道具店・・・。無いのー。また片っ端から鑑定だね。何処で何が買えるのか、多くの人がどういう方法を取っているのか」
「常識を知った上での、ヒイちゃんの道具作り、よろしくお願いします」
「お姉ちゃんに私たちの健康がかかっています」
「分かったよ。迷宮って何級から入れるんだっけ?」
ヒイがニカと確認していく。
「10級が住民登録代わりでしょ、9級から7級が初級、6から4が中級でここからだね」
「3から1で上級でそれ以上も上げられるけど、名誉職とか特別なスキルがある人とかが多いんだっけ?」
「うん。明日は狩り行く?」
ミハがわくわく顔で強請る。ヒイが少し考え、ニカの表情を見て告げた。
「採取と狩りの両方で行ってみようか」
「へー。両方いいの?」
ニカが意外そうだ。
「採取ってそれだけに専念できるかどうか疑問なんだ」
「お姉ちゃん、どういうこと?」
ヒイの疑問にミハが確認する。そこでヒイの質問が飛ぶ。
「採取も狩りもそう遠くない場所ですると、どうなるでしょうか?」
「採取中に無防備になると、狩りの対象に逆に狩られるかもしれない?」
「正解です」
ミハが危険を意識すると同時に心配事も口にする。
「動物、捌けるかな・・・」
「無理しないで」
「魚は捌けるけどね」
ヒイがミハを宥めていると、ニカが出来る事を申告する。
「同じように出来るかは疑問だけど・・・。その感覚でいけると良いよね。とりあえず、明日は採取だけ報告して、狩りは家に帰って獲物を捌けるかで考えればいいんじゃない?捌けなさそうなら、そのまま提出する」
「そうしよ」
三人は明日の方針が決まった時点で、それぞれ動く。ヒイは明日の弁当を多めに作るために多少の仕込みを、ニカは子供たちを入れるカートに看板を括り付けに、ミハは寝た。