189.通常
黙って見守っていたマロウが口を開く。それに頷く、ヒイ。
「ヒイさんに解説を頂いてはどうか?」
「アキちゃん、ヨッちゃん。素材の事もあるから、詳しく教えてくれる?」
「うん」
「いいよー」
二人が頭を突き合わせて、熱心に希望を述べる。ケイの顔が引き攣り、マロウは固まった。
「道具をいっぱいぶら下げるの」
「使う時だけ大きくできるといいな」
「ぱっと入れ替わったり」
「伸びたり、飛んだり」
要望はまだまだ続く。
「流石、ミハときょうだい・・・」
ケイが思わず呟き、遠い目をしたマロウは賢くも口を開くことを避けた。
「アキちゃん、ヨッちゃん。まずは使う大きさの道具を七つ作って貰おうか。そこから合体させたり、大きさを変えられるようにしたら良いんじゃない? 使ってみたら他の要望が出てくるかもしれないしね」
「そっか」
「そうだね」
ヒイが何とかまとめ上げ、フランが通常の道具を二つずつ七種類作ることで落ち着いた。ケイとマロウはほっと息を吐く。フランは軽く請け負っている。
「七種類を二つずつね。順番に作ってみるねー」
「「うん。よろしくー」」
道具のことを語り尽くしたのか、アキとヨツはトオとヤグロと連れ立って外へ遊びに行き、フランも道具の作成の構想を練るという事で部屋に戻っていった。
それを見送ったケイが問い掛けた。
「フランに作れるのか?」
「フランさん、如雨露も作ってくれていたから大丈夫だと思うよ。素材は渡すし、他には何が心配?」
「フランが規格外にならないかだ」
「難しいね」
マロウも肩を竦める。そもそもフランは種族からして希少だ。配偶者もまた同様で、ケイの望む範囲に納まることは難しそうだ。
「俺も分かってて言った。でも、フランが色々な道具を作れるようになるのはいいな」
「そうだね。武器とかは興味ないようだし、作るのも気が進まなそうだから、生活一般の道具を幅広く経験していけると良いかなと思うよ」
「ありがとな」
「こちらこそだよ。フランさんにも直接、お礼は言っておくよ」
「ああ」
ケイはしっかり自分で稼いで、食べていける事の安心を噛み締めた。